【要望書提出】東京都にバスカフェ開催継続に関する要望書を提出しました
東京都に対して、Colaboは以下の要望書を2023年3月20日に提出しました。
支える会が署名も立ち上げてくださり、29,000人以上の方がすでに賛同してくださっています。
私たちは、新宿区役所前でのバスカフェの開催継続を望みます。
【新宿区役所前での3月22日のバスカフェ開催、また4月以降の継続についての要望書】
2023年3月20日
東京都保健福祉局少子社会対策部育成支援課
課長 榎本光宏 殿
一般社団法人Colabo代表理事 仁藤夢乃
〇バスカフェの活動実績
バスカフェ開催日には、スタッフやボランティアが夜の街をさまよう少女たちを探し、声をかけてつながるアウトリーチ活動を行っています。若年被害女性等支援モデル事業のはじまった2018年10月~2023年1月11日までに144回開催し、15,000名ほどに声掛け、3,400名ほどが利用しています。
〇開催の必要性
夜の街で少女たちを探し、声をかけるのは、性搾取を目的とした人ばかりという現状があります。特に新宿・歌舞伎町では性売買の業者や買春者が多く集まり、少女たちを狙って声をかけています。毎晩100~200人ほどの業者が街に立ち、少女たちに声をかけ、さらに買春者も毎晩100人以上確認できます。彼らは少女の話を聞き、食事や宿泊場所を提供し、「衣食住と関係性」を与えるようにして近づきます。それは決して「セーフティネット」ではなく、商品として扱い、性搾取するための手段です。困っている少女たちが支援につながる前に、危険に取り込まれています。
実際に私たちが夜の街を歩くと、男性たちが少女に声をかけ、連れて行こうとしている場面に必ず出会います。私たちはそうした場面に出会ったら、少女に声をかけ、業者や買春男性などから引き離して、バスカフェに案内しています。そうした少女たちは家が安心して過ごせる場所ではなく、虐待等から逃れるために児童相談所などに助けを求めても適切に対応してもらえなかったことなどから「相談」や「支援を求める」ことをあきらめて、自分でなんとかしなければならないと思って、夜の街に行き着いていることがほとんどです。
若年被害女性等支援事業を通して東京都も認識しているところであると考えておりますが、実際に児童相談所に相談しても「心理虐待程度では保護しない」とか「高校生年齢の子向けの施設には空きがないから保護できない」と言われることが起きています。そうして公的支援に適切な対応をしてもらえなかった少女たちが夜の街をさまよい、性搾取の被害に遭っていることは、東京都もご認識だと思います。
公的支援に繋がらない少女の中には、自分の困りごとに気づいていなかったり、あきらめ感が強かったり、自暴自棄になったりしている人が少なくありません。「大人に諦められた」と感じる経験をしていたり、自己責任論の中で「自分が悪い」と思い込み、声を上げられずにいる人もいます。「相談」や「支援」という言葉や行為に抵抗感を持つ人も少なくありません。こうしたことを厚労省も認識し、公的支援に繋がれずにいる若年女性につながる活動として、若年被害女性等支援事業が実施されているということは、先日の国会でも答弁されました。
私たちはバスカフェの活動を通して、そうした少女たちと出会い、つながり、関係性を構築したり、保護や宿泊支援、自立支援などの活動を行い、性搾取の被害に遭わずに暮らしていけるようにサポートしています。
〇支援の手法について
これまでご説明してきた現状から、私たちは10代の女性たちに声をかけ、つながるアウトリーチ活動を行っています。ピンクのバスとテントが目印のこのカフェでは、食事や飲み物、Wi-Fiや充電が無料。バスカフェでは「相談」や「支援」を目的としない場づくりをしています。少女たちに利用してもらいやすいように、大人が「してあげる」場所ではなく、「少女たち自身の場所」として気軽に立ち寄り、自由に過ごせる雰囲気を大切にしています。
バスカフェでは、生活に必要な物品や食品、衣類などを提供しています。コロナ禍で「お菓子よりも、お米が欲しい」「コスメよりも、下着や靴下が欲しい」など、生きていくために必要な基本的な食品や生活用品を希望する人が多くなっています。
若年被害女性等支援事業開始前にも、長年Colaboは声かけの活動を行ってきましたが、ただ声をかけるだけでは、アウトリーチの効果を得にくいため、本事業の委託を受けるにあたって、アウトリーチを効果的なものにするために、バスカフェを開設しました。バスカフェは、夜の街にいる少女たちが直接その場で立ち寄れる場として運営し、食事や生活用品等、少女たちが必要とするものを提供しています。そのことで、少女たちと直接つながり、顔が見える関係性を作っています。
開催場所を歌舞伎町や渋谷に設定している理由についても、本モデル事業開始時からご説明しており東京都にも理解されているものと思っておりますが、そうした少女たちが集う場所、過ごしている場所に私たちが出て行って、出向いてつながることが必要だからです。自ら助けを求めたいと思って、支援機関にアクセス出来る人には、アウトリーチではなく相談機関の周知・広報が必要だと思いますが、本事業におけるアウトリーチは、本来、「相談したい」と思える状態にある方に対してではなく、そう思える状況にもない女性たちにつながるためのものです。
家がなかったり、性搾取の被害にあったりしていても、「仕方ない」「自分のせいだ」と思い込み助けを求めることがなかったり、他者を信用できない、未来への希望も持てない状況にある少女たちとバスカフェでは日々出会っています。そうした少女たちに声をかけた際、バスカフェがもしも、建物の一室だったり、相談室のようなところで開催していたら、少女たちはそこに来ることに今以上に抵抗を感じ、彼女たちと繋がることは難しくなることは、本事業開始前の経験からも明らかです。これまで実施してきたように、新宿歌舞伎町の屋外で、半分外のような状況で、気軽に来やすい雰囲気であることによって、そうした少女たちと出会い、関係性を作ることができるのです。
〇開催日について
開催日について、3月22日にも開催しなければならない理由、また4月以降も継続して新宿区役所前での開催を必ず行いたいと要望している理由をご説明します。
第一に、これまでご説明したような危険にさらされている少女たちは、今日も歌舞伎町にたくさんいます。本当であれば、毎日バスカフェを開催しなければならない状況であり、毎日開催したとしても性搾取の加害者たちのほうが圧倒的に数も多く、少女たちが被害に遭うことを防ぎきれない状況があります。それでも月に3回程度でも、そうした少女たちと繋がる活動をしようと取り組んできました。
現在さまざまな誹謗中傷や妨害があるなかでも、バスカフェは50人ほどの少女たちが利用する日もあります。利用者は虐待や性搾取のなかにいる10代の少女たちです。生活が困窮している人も多く、食品や衣類などの物品は毎回50コンテナ近くなくなります。
性搾取業者に囲まれているが逃げられない、ホストから借金を背負わされ性売買させられている、今日食べるものや帰るところがない、住む場所がない、闇金に脅されている、妊娠したり病気にかかっても病院に行くお金も保険証もない等の状況にある少女たちが利用しています。私たちはそうした少女たちに具体的な支援を提供しており、これはバスカフェに対する妨害が深刻化した今の状況でも変わりません。3月1日には48名、3月8日には37名の少女が利用しました。声掛けによってはじめてバスカフェを利用した少女も多くいます。もし私たちがバスカフェを継続して開催しなければ、そのような少女たちが放置されることになってしまいます。
第二に、バスカフェは定期的に開催し、いつも同じ場所にあることが重要です。継続して活動することが、夜の街にいる少女たちにとっての信頼にもつながります。すぐにバスカフェに来なくても、困ったときは頼ろうかなと思って心にとめておき、いざというときに駆け込んでくれたり、連絡をくれることにもつながっています。また、これまでにバスカフェにつながっていた少女たちからも、同じ場所でのバスカフェの開催継続を求める声が多く届いています。それだけ支援を必要としている女性がいるということであり、これまでつながってきた少女たちと継続して関係性を作る場としてもバスカフェの新宿区役所前での継続を希望していますが、本来は、まだつながれずにいる(支援を求めようという明確な意思がある段階ではない人も含めた)若年女性につながるための活動として本事業があるため、もしもそうした声がなくとも、むしろそれは当然のことであり、継続しなければならないと認識しています。
第三に、すでにお知らせの通り、これまで8回に渡り連続でバスカフェへの直接的な妨害行為を続けてきた者に対して、接近禁止命令が出されました。これは、バスカフェを開催する日の19時~26時に有効となるものであり、バスカフェを開催しなければその効力を得ることができません。この接近禁止命令が新宿区役所から半径600メートルの広さで出たのは、バスカフェ周辺だけでなく、アウトリーチ活動を安全に行えるよう裁判所が判断したためです。私たちが安全にアウトリーチ活動を続けるためには、新宿区役所前でのバスカフェ開催以外にはあり得ません。
〇安全対策について
私たちはこれまでにも東京都に対して、バスカフェを妨害者から守り、安全に開催できるよう求めてまいりました。しかし、警察にも適切な対応をしてもらえなかったことから、改めて対応をお願いしています。
東京都からColaboに対して安全対策や通行の妨げにならないようにとの連絡がありましたが、Colabo側は一般歩行者の妨げになるようなことはしていません。そして、バスカフェに妨害に来る者が一般歩行者の妨げになることがないように、裁判所の接近禁止の仮処分を得ました。利用者の少女たちに危険がないように警備を強化し、弁護士やボランティアを適切に配置しています。それでも妨害者らによって違法行為が惹起されそうな場合には、速やかに110番通報して警察に臨場してもらえるよう、ボランティアが目配りしています。
これまで行われてきた妨害内容は、バスカフェの利用者に直接危害を加えようというものではなく、若年女性がバスカフェに来づらくなるように働きかけるもの、また、Colaboのスタッフやボランティアに妨害対応のために時間を取らせることでアウトリーチに出づらくさせたり、アウトリーチ中のスタッフにつきまとい質問攻めにすることでアウトリーチを妨害するといったものでした。
妨害者の中には、少女たちを性搾取して利益を得てきたものや、そうした者に指示されて動いている者もおり、本事業を通してColaboが若年女性につながることを阻止することを目的にさまざまな妨害をしています。これは私たちが本事業を通してこれまで積み重ねてきた成果故の攻撃でもあると考えています。東京都から、「アウトリーチの手法はバスカフェ以外にもあるのではないか」とも言われておりますが、夜の街で少女たちの命を繋ぎ、性被害から守るためにバスカフェ以上に有効な方法をご存じでしたらご教授いただきたいです。
東京都には、夜の街の現状や性搾取の構造を理解し、妨害に屈せず、本事業を守っていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。 以上
新宿区役所前での3月22日のバスカフェ開催、また4月以降の継続についての要望書