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対談|第2回(前編)菱山南帆子×仁藤夢乃「自分たちでつくる『侵されない居場所』」ーなぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、Colabo代表の仁藤が女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」のメンバーと対談し、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

第二回目のゲストは、菱山南帆子さんです。

菱山南帆子さんは市民運動家で、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の事務局長や、総がかり行動実行委員会の共同代表を務められています。「女性の声で政治を変えよう」を合言葉に、女性たちの架け橋となるフェミブリッジアクションにも取り組んでいます。

「バンドエイドでは足りない」――支援現場で抱いた違和感

仁藤:菱山さんはColaboの妨害がひどかった時、バスカフェに「女の壁」として真っ先に駆けつけて、少女たちの居場所を守ろうと活動してくれました。ColaboYouTubeチャンネルの「性搾取社会を見つめる」という番組では、長年MCとして一緒に問題を解説していただきました。Colaboの活動に間近で関わってもらうことが多かったですが、菱山さんはColaboの活動をどんなふうに思いますか?

菱山:Colaboの活動に関わるにあたって、自分と向き合うことがすごく増えました。Colaboに関わる人はみんな、自分が今までの受けてきた差別だったり、自分の差別心だったり、いろんなものに向き合わなければならないというのが入り口としてあります。

活動している身としては、それが苦しくなったり、大変な思いをしたりしました。でも、だからこそ出てくる言葉があって。

スタッフ自身も当事者運動のひとつとして取り組んでいるというのが他の団体とは全然違う印象を受けました。自分たちも当事者だからこそできる伴走、上から目線の支援ではなく「一緒に共に歩んでいこうという姿勢」は、思っていてもなかなかできないんですけど、活動に関わるスタッフたちみんなも一緒に、自分に向き合ってから少女たちにも関わる、向き合い続けるというのは他の団体と比べて本当に違うなと思いました。

そのうえで、月に何度も夜の街に出て、アウトリーチをして、直接声をかけてつながった女の子たち少女たちと一緒にガチンコで向き合っていますよね。

仁藤:菱山さんも、声かけの活動にもよく参加していただきました。

 

菱山:出会った少女や女性たちとガチンコで向き合っていくというのが、他とはやっぱり違う。Colaboのかかわりは「一歩上から導き、諭す」みたいなのではないんです。私も一緒に活動していてとても勉強になったし、自分が今までされてきたことや忘れてきたこと、無意識に嫌だったことなんかも思い出して、辛い思いもあったんですけど、だからこそもっと深い理解ができるようになったかなと思います。

 

仁藤:痛みの分かち合いって、Colaboの活動という感じがありますよね。Colaboに関わる人って、スタッフもボランティアも、寄付してくれる方も最初は「少女を守らなきゃ」「助けたい」という気持ちで来てくれると思うんですけど、関われば関わるほど、「自分にもその痛みあるな、同じだな」って思ったり、この社会構造の中で、この状況をうみだしている一員として、自分の当事者性に向き合っていったりすることはみんなが経験することだと思いますね。

 

菱山:Colaboの活動は、「バンドエイド」と「根本的治癒」、どちらもやっていますよね。私も福祉施設、障がい者施設で12年間働いてきたんですけど、そういった現場でどんなに頑張っても、指の先から砂がこぼれ落ちるような感覚で、勤務時間内でできることは限られているし、もどかしい思いをするんですよ。それってバンドエイドを傷口に貼っているような状態でいくらあっても足りない。なんで傷口ができてしまうのかという、根本的な傷の原因に着目しないと、いくら傷口だけ見ていてもしょうがないなと思って、私は長年障がい者施設で働きながら市民運動も両立してやっていたんですよね。今は市民運動に1本化しています。

Colaboはバンドエイドと根本的治癒療法を両立しているというか、同時並行でやっている。アウトリーチをして女の子たちと出会って、一緒にどうするかを考えることはバンドエイドだと思うんですけど、さらにこういった状況を作っているのは何なのかってところまで取り組んで解決していかなければ、いくら街に出て女の子たちと出会ってもきりがない作業になってしまう。女の子たちが置かれている社会自体も問題視して取り組んでいる。しかも、女の子たちと一緒に。「あとは大人たちでやるから」じゃなくて女の子たちと一緒にこの構造自体を変えていかなきゃいけないんだというところが他の団体とは全然違うし、本当はどの団体もこうじゃなきゃいけないと私は思うんですよね。

表面的な「支援」という形でやっていても何にも解決しないから、本当の解決って何なんだろうか、本当のゴールって何なのかを明確に出しているColaboが団体として信頼できるし、だからこそ「潰してやろう」と思っているやつが、たくさんいるんでしょう。

 

仁藤:目の前の支援や活動だけじゃなくて、市民の人たちに気づいてもらって一緒に運動を作っていくこと。構造的な問題が多くの人との間で共有されることに対する恐怖心が、性売買買業者や買春者たちの間にあるんでしょうね。

菱山さんは、妨害が一番ひどいときに真っ先に駆けつけてくれました。「Colaboすごい燃えてる」と思って引いていく人も多かった中で、なぜ駆けつけてくれたんですか。

 

菱山:大変な時こそ一緒にやらなきゃいけないと思うし、Colaboの活動に関しては、私は本当に素晴らしい、絶対潰しちゃいけないと思ったんですよ。潰れたり、弱くなったりしたら、攻撃者たちの思うつぼだなと思いました。こういう時こそ女たちは繋がって守らなきゃいけないなと、強く思ったんです。

私は憲法の運動をたくさんやっているので、戦争のことをすごく勉強してきているんですよ。戦前、そして戦争が始まる時にかけて、すごく勇ましいことを言っていても、実際戦争が始まろうとして弾圧が始まった時に、真っ先に逃げていく人たちっているんですよ。それと重ねて考えると、私はColaboに対する攻撃は、一つの弾圧の始まりだと思ったんですよね。

憲法問題に取り組むなかで、戦争と女性差別って一体だということを実感してきました。戦争と性暴力が一体なのと同じように。ですから、こういった女たちが犠牲になるような、そして女性の活動が弾圧されるような事態というのは、ものすごく危険な状況だなと思いました。

こんな時に黙っていたら、私は生涯「何であの時立ち上がらなかったんだ」と後悔すると思ったので、周りの仲間たちに声をかけて、駆けつけました。

 

仁藤:菱山さんは、妨害者がバスカフェに来て「オラー」「仁藤出せ」と言ってる時に「帰ってください!」と文字通り「壁」になってくださいました。

 

菱山:仲間を守ることは活動の1丁目1番地だと思うんですよ。「どんなことがあっても、あなたの味方だよ」っていうメッセージを自分たちが出さなかったら、Colaboに集まってくる女の子たちは安心できないと思ったんですよね。「何があってもColaboの味方だよ」って言う女たちが、おばちゃんも私たちもたくさん集まってきたらColaboに来る女の子たちも安心できるのではないかとも思いました。

 

仁藤:まさに、菱山さんたちの姿を見て「あのお姉さん、かっこいい」ってバスカフェに来る少女たちが話していました。自分たちが攻撃されているなかで、女性たちが一緒に怒りを表明して、「この活動はなくてはならない」と声を上げてくれたことは本当に大きかった。そのおかげで私たちも、とにかく活動を潰されないように続けることができました。

あの時、何が起きているのか分からないで怯える人もいるなかで、女の活動が弾圧されるのはすごく危険なことなんだといち早く察知して動いてくれたのは、やはりそれだけ権力のことを見つめてきたり、戦争がどのようにして起きたのかということを考え続けたりしていたからだったんだなと思いました。

今、Colaboを攻撃していた人たちが排外主義をすごく広めているじゃないですか。同じメンツなんだけど、うちらがやられているときはこれが女性差別の問題だとか弾圧だと気付けない人も多かったですよね。

 

菱山: Colaboの攻撃をしてきた人たちが、それをお手本のようにして、今の排外主義、外国人差別の急先鋒に立っています。まずは目障りなColaboをやっつけようと結集した人たちが勢いづいて排外主義を煽動しています。やっぱり、つながっているんだなと思いましたね。

自己責任社会が強める女性たちの生きづらさと新たな形のバックラッシュ

仁藤:女性差別や性搾取の問題というのは暴力や差別、搾取の構造の一番底にある問題だと思っています。Colaboが妨害されていた時には、「これは女性差別だ」と多くの人が反応できなかった。その状況のなかで、現在、差別と排外主義が金や票になることを多くの人が学んで、差別の扇動を加速させています。菱山さんは、今の女性差別の現状についてはどう捉えていますか?

菱山:Colaboの攻撃を発端に、女性を叩くと金儲けになるということが広まってしまったなとすごく思っています。女性の置かれている現状は、より厳しくなってきたと思いますね。選択肢がすごく狭められてるような、選択肢がないなって。ただでさえ入試差別に、就職差別、仕事に入ったとしても職業差別や、役割分担で差別されたり、賃金の格差があったり。こういったなんらかの差別を受けていく中で、女性たちの未来への選択肢がどんどん狭くなってきていると思っています。入試、就活、賃金差別、そこから更にあぶれた人たちは、自分の体を売ってやってください、みたいな自己責任社会になっている。

ものを言う人たちへの、反発、バックラッシュも強まっていますよね。それだけみんなの生活が苦しくなってきているんでしょうけども、「とにかく自分たちの生活を守るためには端っこを切り捨てなきゃいけない」という感覚になってきているなと思っています。

参政党なんかも「主婦でいいんだよ」って言うんですよ。フェミニストは「子どもを産んで育てて働けと女にすごい過重負担を強いてくるけど主婦でいいんだ」などと言っています。

女たちを黙らせるバックラッシュだけじゃなくて、「女には女の役割があるからキリキリキリキリ働かなくてもいいんだよ、働くのは男性だから」というような新しいバックラッシュの波が押し寄せてきているのがすごく怖いなと。

それがより女性の選択肢と未来を狭めているのですが、それに目を向けさせないような状況がつくられていると思っています。

 

仁藤:家父長制を温存しようとする人たちの言葉に「あなたのままでいいんだよ」と言われているような気がして、気持ちが寄っていってしまう女性たちの痛みもわかります。女性たちがなぜそう思わされているのかといったら男社会の構造のせいなのに、女同士の闘いがあるかのように見せかけられて、女の分断を生み出して、男社会の権力の維持が繰り返されていますね。それがまた深刻になっている。

 

菱山:本当に。女たちの分断なんですよね。誰が分断してるかと言ったら、男なんですよ。

本当に黙ってほしいと思います。女性たちの生き方は様々であっていいと思うんですけども、男性たちがそこに介入してきて、子どもを産んだ・産まない、結婚している・していないといったことで様々な、細やかな分断を引き起こしています。これをどう乗り越えて、手をつなぎ合っていくかが課題になっていると思います。今までと違うバックラッシュが出てきていて、女性たちが前にでて「フェミニズムは私たちから選択肢を奪っている」という逆説が出てきているというのを強く感じますね。

 

仁藤:若い世代と関わっていると、SNSやマッチングアプリで「結婚しよう」とか「早いうちに脱毛して綺麗なツルツルの女になろう」という広告ばかりを見ているから、別に自身が結婚したいと思ったわけじゃないのに、結婚に焦らされている20代の女性もすごく増えているなと思います。そういう広告に参政党の言説も補強されている感じがありまう。そうした広告も、企業がお金を出している。そういうところに女性を押し込めるための男社会の作戦だなと思います。

一方で、性売買する女たちに対する社会の目線はすごく厳しくなっています。2025年に、大久保公園周辺に立っていた女性4人が「客待ち」していたとして逮捕された時、顔出し・実名で報道されました。彼女たちも、ホストに借金を背負わされたり、知的障がいや精神疾患があったり、子育てをしていたり、いろいろな事情があってそこに立たされているのに、「男を騙す悪い女」「何億円も男から取っていた女」として取り上げられました。そのお金は全部、回収する男たちにいってるわけなんだけど、そういう搾取の構造に触れられないまま、「体を売る悪い女と、家庭的な女」といった女性の位置づけがここ最近強まっているなと思います。

 

菱山:タイの12歳の女の子が日本で売春させられていたことも、「その子が悪い」「違法外国人だ」ということを排外主義の人たちが言い始めていますね。

 

仁藤:排外主義者が「タイの母親は娘を売るのか」などと言っていますが、「日本でもあるから」と思いますね。日本は歴史的に、「貧しいから」という理由で娘を売りに出したりしていたし、今だってColaboで出会う子のなかには、母親と一緒に風俗で働いていたり、母親や彼氏に言われて体を売っていたりする少女はものすごく多いんです。

タイの少女のお母さんも、性売買させられていたという報道もあります。例えばフランスや韓国のような「性売買は女性に対する暴力だ」という認識がある社会では、母親も当然被害者なんですよ。それなのに日本では、「母親は何していたんだ」「外国人が悪い」と言われる。さらに、ここ数年円安の影響もあって買春客が海外から溢れているから「外国人による買春が問題」と、買う側の問題も外国人がメインであるかのように報じられています。

 

菱山:買う男はどうなんだってね。

 

仁藤:実際に、少女や女性たちを買う男は、ほとんど日本人なんです。それなのにニュースでは、インバウンドで外国人観光客が買春していると報道されている。日本人男が買春し、外国人も買春できるような社会の基盤をずっと作り続けてきていることが問題にならないんです。

 

菱山:私もタイの少女の人身売買事件の報道を見て、少女や母親に批判が行くのかとすごくびっくりしました。子どもだとわかっていながら体を売らせていた店はどうなんですか?という話だし、60人もの男が少女を買っていますからね。買った男たちだって、「若いな」と思ったはずなのに、それでもむしろ幸いと思って買っていたわけですから。

本当はそっちを問題視しなければならないにもかかわらず、外国人だとか、親が「鬼畜」だとか、そういうふうになっているのは問題のすり替えだなと思いましたね。女性たちがなぜそういった状況に陥るのかというところに目を向けさせない報道の仕方には問題があるし、SNSなんかももうずっとその調子ですよね。「女が悪い」っていう。でも「買う男がいるからそういった状況が生まれるんでしょ?」ということに言及しない。そういうことを言うと、めちゃくちゃ叩かれる。

 

仁藤:菱山さんも大久保公園のあたりで活動していた時に、男たちに声かけられましたよね、

「いくら?」って。

 

菱山:立っていたら「1万円でどう?」と言われて。65歳くらいのおじさんで、ほんとびっくりして、気持ち悪かった。この人にはきっと家庭があって、小遣いもらってここにきて、「1万円で」って言っているんだなと思って。普通の顔をしている普通のサラリーマンみたいな人が、大久保公園で女の子を買っている実態を、Colaboと活動して目の当たりにしました。自分が実際に声をかけられたこともすごく衝撃的でしたし、普段会社では「偉い」人も、夜は1万円で少女を買っているようなことが当たり前になってしまっている。それが堂々とできる国だから、観光スポットみたいになっているんです。

 

仁藤:日本では買春が処罰の対象になっていないことがすごく問題で、一方で女性ばかりが捕まって晒される状況を本当に変えていきたいです。そのためにも、女性人権センターでは、買春を処罰して女性の脱性売買を支えるような取り組みに向けて運動していきたいなと思っています。

(後編)「男社会による女性の「分断」に負けない関係性をつくるために」に続く

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