コラム
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女性人権センター

Colaboでは今、「女性人権センター建設プロジェクト」を計画し、ご寄付の呼びかけをしています。
次回以降、この対談では、趣旨に賛同する女性を中心に結成した1000人委員会のメンバーとColabo代表の仁藤が対談しながら、なぜ今、女性人権センターが必要なのか、性差別の現状を見つめていきます。今回はその対談に先駆けて女性人権センターとはいったい何なのか、どんな思いで作ろうとしているのか、仁藤とスタッフの村田が一緒にお話していきます。
村田:そんな中、今女性人権センターが必要だと思った理由を、ぜひ伺いたいです。
仁藤:この間、男社会からの暴力を浴びせられながら私たちが学んだのは、拠点が借り物であるといつでも潰しに来られるということでした。妨害が一番ひどかった2023年3月に東京都が、「危ないから」と私たちにバスカフェの活動を止めさせることがあった。その後も自主事業として、市民の方の協力で別の場所で活動を続けていた時も、私が歌舞伎町を歩いていたら男に囲まれちゃう状況があったんですよね。ある時、30人くらいの性売買業者の男やYoutuberの男に囲まれて「公金返せ」とか「領収書出せ」とか、デマを元にしたことを色々言われて面白がられることがありました。その時、声かけチームの若い子たちも一緒にいたんですよ。この子たちが撮られたらやばいと思って、「行って行って」と合図して、私だけになろうと思ったんだけど、みんな心配だからちょっと離れたところでこっちを見ていて、「良いから!」と言ったんだけど、私を一人にできないと思ったみたいで。女の壁メンバーにすぐ連絡して「今絡まれちゃってるんで来てください」って言ったら「今2、3人行くから」と最初言われて、「いや、足りないかな?」と電話で伝えたら、10人以上の女性たちが、走って現場に来てくれたんです。
村田:私もあれ、後ろから追いかけたんですけど、追いつけなかったです。すごく早かったですね。
仁藤:あんな風に人に助けられる経験って滅多にないじゃん。スーパーマンの映画みたいでした。めっちゃかっこいいの。みんなバーッて走ってきて「何してんの!」と男たちの前に出て、守ってくれたんですね。そんな状況の中でも、東京都や都知事が加害者たちに一言、「この事業への妨害を許さない」って言ってくれればこんな風にならなかったはずなのに。それどころか、東京都がColaboに活動をやめさせたことで、彼らは大盛り上がりしちゃっていて。「お前らのことなんて誰も守ってくんねーよ」「歌舞伎町から出て行け」って、今でも言われることがあるんです。それで苦しい状況に追いやられるのは誰かと考えたら、それは行き場がなく暴力の中にいる少女たちなんですよ。
そういう少女たちが社会を信頼したり他人を信頼したりして自分の人生を考えていくには、支援団体が萎縮せずに活動できることがすごく大事なのですが、それがぶち壊された。そういう状況だからこそ、女性たちの声を封じようとする圧力に負けない女性の連帯が必要だと考えて、女性人権センター建設プロジェクトを立ち上げました。
この先、女性の人権が守られる社会に向けて闘い続けること、そのための仲間を増やして連帯を広げていくことを考えた時に、性搾取と女性差別に抗う女たちの活動拠点が必要だと思いました。
村田:人ももちろんそうなんですが、建物があるだけで「行こう」と気持ちが変わってくると思います。ここで、女性人権センターでは何をしたいのかお話したいなと思います。女性人権センターで実現したいことは、男社会からの暴力に屈しない女たちの活動拠点となること。そして虐待や性搾取の中にいる少女たちとつながり、支える活動拠点となること。さらに性搾取や女性差別、女性の人権に関する学習・交流拠点になること、若手活動家の活動拠点になることです。性搾取・女性差別に抗う女性たちが出会い、つながり、ともに活動していく女性運動の基盤になることを目指したいと思っております。
まず一階は、Tsubomiカフェと物販ができる場所を作りたい。Colaboとつながってパティシエになった女性がいるんですよね。その方が作ったケーキを販売したり、そこで少女たちがアルバイトができたりするような場所を作りたいなと思っています。夜には10代女性向けの無料カフェで食事や物品を提供したり、女性の人権に関する書籍やグッズの販売、イベントを開催するスペースにもしたいです。街にいる女の子たちがお腹を満たし、見返りを求めない大人とつながるきっかけになる場所、そして少女や女性たちの就労支援の場、市民が利用でき、性搾取や性差別の問題に触れるきっかけとなる場にしたいと思っています。
仁藤:一階は、これまでバスカフェでやってきたような、少女たちがご飯を食べたり必要なものをもらいに来たりできる場所にしたいと思っています。今も、バスカフェを拠点にして街にいる子たちに声をかけて「ご飯食べにおいでよ」とか「ちょっと休みに来たら」と案内しています。これまで歌舞伎町のど真ん中にある新宿区役所前でバスカフェをやっていたのですが、東京都が妨害に屈してからは歌舞伎町から徒歩20分くらいの場所で開催しているんですよね。区役所前は、17時に区役所が閉まると性売買業者が少女たちに声かけをしている場所だったんですけど、今の開催場所は、少女たちが普段出歩くような場所とはちょっと離れていて、遠いんです。
バスカフェが歌舞伎町の中心にあることにどんな意味があったかというと、少女たちが普段いるところにピンクのバスがあることで「今日もあの人たちがいるな」「ああ、またバスカフェか」と私たちのことを思い出してくれたり、何かあったときに駆け込んでもらえたりする。14歳のときから知っていたけど、利用することはなく、3年後に17歳になって、どうにもならない状態になってから来たりすることがあるから、その子たちがいる場所にシンボル的として存在していることにすごく意味があったんです。
だからこそ、日本で一番、というか世界で一番性搾取が深刻な町に、女性の人権を掲げたセンターが必要です。そこに駆け込めば、みんなが一緒に怒ってくれて、一緒にどうにかしようって考えてくれる、そういう拠点を作りたいと思っています。
一階では、体を売っているような状況の女の子たちが、お腹が空いたときや泊まれるところがないときにおじさんのところに行くんじゃなくて、見返りを求められずに必要なものが揃う場所にしたい。それがその先の支援や、その子がこれからのことを考えていくきっかけになればと思います。
村田:二階は反性搾取ライブラリー。「私たちは『買われた』展」の常設展や証言映像、女性差別に抗う女性たちの闘いの歴史や運動に関する資料などを設置したいと思っています。ここでは性売買・性搾取の実態、女性の人権に関して学び・交流できる場、そして女性を処罰の対象とする売春防止法からの脱却と買春禁止法制定に向けた運動の基盤、国際社会との連帯づくりの場にしたいです。
仁藤:性搾取の実態を学べるような場所って、日本には今ほとんどないんですよね。資料がまとまっていたり、当事者の声が聞けたり、これまでの女性たちの闘いの歴史を学べる場所にしたいと思っています。Colaboには支援に関わる方、研究者の方、メディアや他の市民の皆さんからも性売買の問題や女性の人権、若年女性支援のことを学びたいという問い合わせがかなりあるんです。そういう人たちが関心を持ってくれた時に、ここに来れば書籍や資料に触れることができる。
また、Colaboに集う人や、研修に参加してくれる方々の話を聞いていると、性売買に関する問題意識を共有できる人が周りにいなかったり、職場や活動現場でも女性が差別について声を上げたときや自分の被害について話をしたときに、その痛みに共感してくれる仲間がいなかったりして孤独感を感じてモヤモヤしている女性がたくさんいるんだなと思ったんです。
そういう人たちが、Colaboでだったら話せる、Colaboに集まっている人だったら分かり合えるだろうと思って話してくれることがすごく多いので、そういう問題意識を持っている人たちや痛みを持っている人たちで集まって話をしたり、学びを深めたり、痛みを言葉にして、問題を変えていくような場所になるといいなと思っています。
今、日本では売春防止法で女性だけが処罰される法律になっているけど、北欧やフランス、韓国などで導入されている買春者処罰法では、業者と買う側が処罰されて性売買の中にいる女性が脱性売買支援を利用できるという制度があるんですね。そうした海外の実態を学んだり、国際的な交流をみなさんと一緒にしたりして日本でも買春者処罰、そして女性を支える支援の充実を目指す運動をしていく基盤にしたいと思っています。
村田:「私たちは『買われた』展」が常設されるのはすごく大きい意味があるなと思っています。ここに来れば当事者の少女たちの声に触れることができる。その上で交流できて、お互いの考えを共有できる場ができることがすごく楽しみです。
仁藤:性搾取の渦中にいる少女たちが来る建物の二階に「私たちは『買われた』展」の常設展があると、少女たちもなんとなく見てみようかなという感じになると思うんですよ。そうすると、過去にそういう経験があって声を上げている同世代の子たちの姿に触れることになります。「今の自分と同じぐらい年齢で、自分と同じ思いをしてきた人がいるんだな」「自分が受けている被害も本当はこういうことだったんだ」と、ほかの人の経験と照らし合わせながら自分の経験を解釈することにつながるんじゃないかなと思います。
今路上にいる子たちにとって性売買は当たり前になっているから、14歳、15歳で出会った少女たちは「別にうち困ってないし」「何も痛みも感じてないよ、今の生活で満足してる」って言うんですよ、平気な顔して。だけど腕は傷だらけだし、全然平気な状態じゃない。でも、そうやって言うしかない状況にあるから、「本当はうち、こんな生活やめたいんだよね」ってポロっと言うまでにも、すごく時間がかかるんです。でも、同じような経験をした子たちの話や声を聞いたら、「私も本当はきつい」って言いやすくなると思っています。
村田:一階が気軽に立ち寄れる場だとして、二階はきっかけ作りの場になりますね。三階は、若手活動家の拠点にし、貸し机や住所を置けるポスト、ミーティングルームや自活センターなどがあるスペースにしたい。女性の人権問題に取り組む若手活動家を支える拠点にし、性売買から抜け出したいと考える女性たちがその後生きていくための力を共につけていくことができる場にしたいと思っています。
仁藤:どうしてこれが必要かというと、私自身も大学生の時に活動を始めたとき、こんなに攻撃に遭うって思ってなかったんです。今も、声を上げる女性に対する攻撃は強まっていて、Colaboがやられているのを見て「怖いな」と声を上げるのを躊躇してる女性ってたくさんいると思うんですね。若い人たちがいろんな問題に気づいて「声を上げよう」「活動していこう」と思った時に、大変なことがいろいろあります。私自身もそうだったけど、事務所を借りるのにも保証人が必要だったりお金がない中で初期費用がたくさんかかったり、そういうときにも、机一つから借りられてポストを置ける場所があること、住所が借りられることが大事だと思っています。
若い女性が活動すると、拠点の住所に変なストーカーみたいな人が来るんですよ。実際に、私の家にも妨害者が来て、何度も引っ越さなきゃいけなくなっています。そういう危険があるから、女性たちが嫌がらせに怯えないで活動できるようにしたいと思っています。
また、同じような問題意識を持った人が集まったり、若い人同士や、若くなくても女性の人権問題について声を上げたいと思った人が集まって活動が生まれる場所にしたいと思っています。私も活動を始めた時に、リベラル系の、NPO関係の教えたがりのジジイがいっぱい寄って来たんですよ。その人たちも善意で寄ってくるから無下にもできなくて、私もニコニコしたりヘコヘコしたりしちゃっていたんですね。若い女性たちがそういう思いをしなくていいようにしたい。
でも、組織を作っていくことや手続き的なことやアイディアなど、共有できる経験はあるから、現状を変えるために女たちがつながっていけるような場所を作りたいと思っています。
あとは、脱性売買したい女性向けの自活センターを作りたいです。韓国では性売買防止法という法律があって、それに基づいて性売買の中にいる女性が相談できる場所が全国に36か所あって、さらにインターンシップができる自活センターが18か所あるんですよね。そこではキムチや味噌を作ったり、みんなで映画を見たり、朝から来てそこで日中活動することができる。性売買の中にいると、夜中心の生活になってくるので、そのリズムを直していったり、一緒にものづくりをする中でいろいろな力をつけていくことができる。自分のこれからの人生を歩んでいくためのインターンシップが4年間までできて、通うことで、生活できるぐらいの支援費を毎月もらいながら研修を受けられるんですよね。そういう時間が日本の性売買を経験した女性にもあるといいと思うし、そういう実践が日本でもできればいいなと。
今、日本の制度の中で似たような枠組みとして、障がい者福祉の作業所があります。性売買の中にいる女性が障がいをもっていたり、精神疾患を抱えていたりすることは多いですが、そうした女性が障がい者福祉の枠組みで支援を利用したときに、そこでも性被害に遭うということがすごく多い。別の利用者の方から「今日のパンツ何色?」って聞かれたり、職員の人たちもジェンダーの問題に理解がないから、「性売買していた」なんて言ったらニヤニヤする感じで見られたりすることもある。そういう場は安全でなく、性売買の経験を前提とした関係性じゃないんですよね。
韓国のように、同じような経験をした女性たちが集って、その痛みを分かち合いながら、一緒に頑張っていけるような、そういうセンターを作りたいと思っています。
村田:韓国だと、自活センターを利用した女性たちがその後、社会福祉士になったり、大学院に行ったりする選択肢もありますよね。仁藤:韓国では性売買を経験した女性たちが、その後支援を利用して大学に行ったり、資格を取って、女性相談員として活動したりしている人もたくさんいるんです。彼女たちは、「それは支援があったからできたことだ」って言うんです。日本では、性売買の中に何十年もいた人が女性人権活動家として活動していたり、相談員を支援機関の窓口でやっている姿を想像つかない人がほとんどだと思いますが、本来はそういう力があるんです。保障されるべき生活や教育、権利が実現していけば、そういう風にもなれるんだって私自身も彼女たちに学ばされるし、日本でもやっていきたいと思っています。それがいずれは制度化されて全国に広がっていくものにしたい。
村田:脱性売買をした後が一番重要ですよね。
仁藤:性売買をやめられないのって、その先の選択肢や生きる方法がないからじゃないですか。だから、それを作っていかない限りは、女性を性売買の構造の中に追いやっていく状況は変えられない。性売買から抜けた後のことは、とても大事です。
村田:四階はColaboの拠点で、少女向けの相談所と脱性売買の相談所として少女たちが自由に過ごせるフリースペースや、ミーティングルーム、ベッドルーム、シャワーなどがあります。ここでは、街にいる少女たちがほっと一息つける、駆け込める自分たちのセーフスペース、お腹を満たし見返りを求めない大人との関係づくり、生活に必要な情報・物品・食品の提供、緊急相談、病院役所等への同行、医師や弁護士と専門家との連携、シェルターでの保護、居住支援、生活支援、就労支援、学習支援、子育ての相談等、そしてColaboとつながる少女たちや女性たちによるサポートグループの活動などができる場にしたいと思っています。
仁藤:四階にはColaboがやってきたような支援の拠点を作りたいです。ゴロゴロ寝ることができるし、若くして出産して小さい子どもたちを連れてくる子も多いので、子どもたちを遊ばせたり走り回らせたりすることができるスペース。シングルマザーで若くして生活していると、ワンルームの狭いところで母子で生活していることがあるから、そこまで広くない今のColaboでも「こんなに遊べるの?」ってくらい子どもたちが走り回る。椅子やソファでピョンピョンして、そうやって子どもを遊ばせるだけでも子どももストレス解消になるし、その間に親とゆっくりご飯を食べたり、お茶しながらしゃべったりもできる。妊娠・中絶などの緊急の相談など、普段私たちがやっていることが、この場所で実現できればいいなと思います。
Colaboにはこれまでにも十年、二十年と⾧い間性売買の中にいた女性からの相談がありましたが、Colaboは「少女向け」ということを打ち出して活動しているので、大人になってから抜け出したいと思った人たちが相談しにくいという声が多かった。「若い頃にはColaboに出会えなかったけど、早く出会いたかった」と語る方も多くて、性売買したい女性向けの相談所としてKEYを開設ました。女性人権センターは、脱性売買の相談拠点にもします。
村田:五階はシェルターとして利用したいと思っています。緊急の避難に対応できるような居住スペース。雰囲気としては2LDKから3LDKのような間取りにして、テラスでバーベキューもできる。
仁藤:バーベキュー大事です!Colaboは焼肉とかバーベキュー、多いですよね。みんなでお泊まりに行ったらバーベキュー、DV彼氏と別れた時のお祝いでみんなで焼肉行ったりとか。子どもたちも大人数でご飯を食べて自分で焼いたり焼いてもらったりして食べる経験ってあまりないから、そういうことをしたいなと思います。
村田:野菜や花を育てるようなスペースも考えています。ここでは緊急時の宿泊保護、DVや虐待などから一時的に離れたいときの一時的な休息、シャワー、お風呂の利用ができ、まずは安全が確保されるところで眠り、この先のことを考えていくための時間を持ったり生活に必要な情報・物品・食品を提供したり、何かあったときに帰ってこられる場所にしたいなと思っています。
仁藤:安全のために場所を隠したシェルターはまた別の場所に作りながら、ここではちょっと休むことができるような場所にしたいと思っています。最初にColaboが2015年に開設した一時シェルターが商店街の中にあったとお話ししましたが、そこが三年前の妨害で加害者たちに居場所を特定されたり拡散されたりして安全を守れない状況になったので、泣く泣く閉鎖しているんです。
そこは女の子たちがシェルターを出た後も帰ってきたり、何かあったとき顔を出したり、「休みの日だから手伝えることある?」と言いながら来てくれて私たちと一緒に活動したりする場所でした。女の子たちも、ふらっと来たような顔をしているけど、聞いてみるとめっちゃやばい状況にある、実は話したいことがあって来ていたみたいなことがあったり、いつでも帰って来られる場所だったんですね。年末年始も、みんな実家に帰れるような状況じゃないから集まって、狭いのでぎゅうぎゅうになりながら過ごしたり、鍋を食べたり、おせちを作って食べたりしていた場所だったんです。
だから妨害でそこを閉めざるを得なかったのは、みんなにとってもすごく悲しくて、喪失感でいっぱいの出来事で。女の子たちがあんな寂しそうな顔をしているのは初めて見たっていうくらい、寂しそうだった。私が十年前に買ってきたリサイクルショップの激安の赤いソファもみんなのお気に入りだったんだけど、そういうものも一人暮らしなど、新しく生活を始めた10代の子たちの家に車で、みんなで運んだんですよ。片付けも女の子たちが一緒にやってくれたり、シェルターで使っていた食器とかもそれぞれが持ち帰って家で使ってくれたりして。寂しかったんだけど、その時に女の子が、「この場所がなくなっても、うちらがいるとこがColaboだから」と言って励ましてくれた。その拠点はなくなっちゃったんだけど、そこがみんなにとってのColaboってみんなが思っていた場所だった。
今は、新宿歌舞伎町にある拠点を中心に活動していますが、もとの場所は、本当にぼろくて、襖に穴があいてるようなボロ屋で。歌舞伎町の拠点はすごく綺麗だし、団体の拠点っぽいから、ここだと雰囲気変わっちゃうかなって思ったんだけど、その次の年からは女の子たちもここに集まって年末年始を過ごして、「私たちがいるところがColaboなんだ」ということを姿で見せてくれた。
私が、出会ったばかりの女の子に、現実に向き合うために突きつけるようなことを言ってやり取りしているときも、ちょっと年上の子たちが「それうちも言われたわ」「夢乃さんマジはっきり言うよね」とか「Colaboではそういう男のことはみんな早く別れなって言うから」って横からちょっと言ってくれたりするのも、前の拠点のときから変わらない。そうすると和むし、先にColaboに出会った子たちが、次に来た子たちの辛さやしんどさに共感していることを態度で示してくれて、一緒に場を作ってくれたんですよね。女性人権センターもそういう場所にしたい。
それと、路上やバスカフェで出会った子たちが「妊娠してるかも」ってことが結構多いんです。だけど一緒に病院に行く約束をしても多分その約束の日時には会えない。時間に起きられなかったり、交通費がなかったり、支配的な彼氏のところに戻ったら家から出られなくなるとか色々あるから、そういう時に「とりあえず今日泊まっていかない?」って言って、次の日一緒に病院に行かないと手遅れになっちゃうんですよね。そういう時も泊まることができる場所にしたいなと思います。
村田:「うちらがいる場所がColabo」、名言ですね。
仁藤:めっちゃ心強かった。すごく嬉しい言葉だなと思います。
村田:少女や女性たちを支える支援拠点、女たちの揺るがない活動拠点を作りたいという思いは2014年頃からすでにありましたが、それから10年以上経ち、声を上げる女性たちへの攻撃が深刻化していること、女性支援団体などが妨害を恐れて権力や男社会と闘うことができなくなっていることを目の当たりにしてきました。そして私たちは、女性差別の深刻な日本社会で差別や暴力に抗っていくためにはColaboだけでなく、様々な人権活動を行う女性たちがつながり、連帯できる場所づくりが必要だと考えるようになりました。
仁藤:もう一つ、今建てなきゃいけないと思う理由があります。Colaboは私が学生の時に立ち上げて、その活動に連帯してくれたいろんな方に支えていただいてきましたが、その多くが⾧年女性差別に抗ってきた女性の先輩たちなんですね。そういう人たちにいっぱい励まされて、支えてもらって、一人じゃないって思えるような状態で活動してきたんですけど、高齢の方が多いんです。この先5年、10年、20年って時間が過ぎたとき、まだ私たちは40代、50代。でも、先輩たちが20年後にはもういないので、その時に日本の女性差別の現状にどう抗っていけばいいのかと考えたら、不安でいっぱいです。こんなに差別や排外主義が広がっている中で、バックラッシュが吹き荒れている中で、どうやって次の世代と一緒に運動していけばいいの?やばい!と思ったんですよ。だから先輩女性たちが元気で、一緒にいてくれるうちに女性人権センターを一緒に作って連帯を生み出していきたいんです。
私も、闘ってきた先輩たちとの出会いに励まされてきたから、次の世代の人たちにもそういう人に出会ってほしいと思うんです。女性たちがこれまで、どんなひどい目に遭ってきたか、それをどう乗り越えてきたかは、今私たちが受けている攻撃とつながることですし、女たちが考えが違ってもどのように手をつないでやってきたのかということも学んで、女性のつながりを作っていきたいなと思っています。
村田:先輩たちの姿から学べることは多いですよね。韓国でも、日本軍「慰安婦」サバイバーの金福童さんが第一線で闘っていく姿を見ていたことから、後の世代が「私たちも一緒にやらなきゃ」ってどんどんつながっていき、若手の活動家が増えています。女性人権センターも、そういう場にしていきたいですね。
仁藤:歴史を記憶するような場所や学習ができる場所も日本だと少ないので、まずは歌舞伎町に女性人権センターをつくって、そこから全国各地に同じようなものが必要だよねと、広げていきたいなと思います。
村田:2023年3月に、東京都と新宿区が妨害に屈してバスカフェ開催のために場所を使わせてもらえなくなってから、実はColaboは、歌舞伎町で5億5000万円ほどで土地が販売されているのを見つけました。
仁藤:超いい場所だったんですよ。
村田:それで購入に向けて動き出そうとしたんですよね。
仁藤:今こそ妨害に揺るがない拠点、女たちの闘う拠点が必要だと思って、その土地が欲しかったんです。だけど、今のColaboの自己資金と、銀行からの融資可能な金額を合わせても到底5億5000万に及ばなかった。そのうちに土地は誰か別の人が買っちゃったんですね。
日に日にこの街の状況は悪くなるし、最近は世界中から円安の影響で買春者が集まっているんですよ。自分の国ではできないことが日本では堂々とできるし、安く少女たちを買えるということが世界に広がっているんです。被害に遭う子の低年齢化も深刻で、バスカフェに来る子には、12歳、14歳ぐらいの子たちもいて、「これ以上待つことはできない」ということで女性人権センター建設プロジェクトを立ち上げ、支援を呼びかけることにしました。
良い土地があったときに買えるだけのお金を持っておかないと買えないので、まずお金を集め始める。同時に、現実に向けて具体的に計画を詰めていきたいと思っています。
村田:土地購入と建設には10億円が必要なんです。そこで、4年間かけて寄付集めを行い、2030年に新宿歌舞伎町に女性人権センターを建設したいと考えています。すでにご寄付の呼びかけを始めていますが、12月から寄付キャンペーンをスタートする予定です。ぜひたくさんの方にこの社会をつくる当事者として、寄付を通じて活動に参加してほしいなと思っています。
仁藤:10億円の内訳を説明します。まず、土地購入に6億円かかり、建物を建てるのに一階7000万円×五階建てで3億5000万、内装や備品に4000万円、手数料やその他の経費で1000万円。この10億円を皆さんと一緒に集めて、市民の力で実現していきたいなと思っています。
お金を集めることはもちろん必要だけれど、それだけじゃなくて、このプロジェクトを通して、女の連帯をつくりたいと思っているんです。痛みを共有したり、言葉にしてつながる。そういうことが現状を変える力になると思っています。だから、「こういう場所が必要だよね」という想いをみんなで言葉にして、つながっていく。そういうことをしたいと思っています。
女性人権センターの2030年建設を目標に走り始めます。実現したら、女たちが女性差別の現状に抗っていく、バックラッシュにも立ち向かっていく、そういう拠点になると思っているし、建設に至るまでのプロセスを通しても私たちはもっと力をつけてつながりを強くしていけるんじゃないかなと思っています。
村田:女性人権センター、2030年建設を必ず実現させたいです。寄付キャンペーン期間に寄付をしてくださった方には、限定の返礼品も用意しているんですよね。
仁藤:返礼品の有無は選べるようになっているんですけど、第一弾として、Colaboと繋がった少女たちがデザインし、手作りした性搾取に反対するグッズや、能登の輪島で作成された輪島塗のお箸を用意しています。
私たちは震災後に能登での活動も行ってきました。そこで少女に向けて無料カフェを開催して、服や必要なものがもらえるようにしたり、ゆっくりできる時間を作っていたりしたんですけど、そのカフェを利用してくれていた中学生の女の子が地震では無事だったけど、その後、豪雨の災害が続き、その時に亡くなってしまったんです。その子の実家が輪島塗のお箸を作っていて、そのお店も応援したいという想いと、私たちも能登のことを忘れてないよということを伝えたいと思いました。そのご家族が協力してくれて、今回返礼品として用意することができました。
この記事を見てくれたみなさんにも、この機会にご寄付の呼びかけをしていただきたいですし、日常的に使うグッズを返礼品として用意するので、Colaboと繋がっていることを日常の中でもみなさんに感じてもらえたらとても嬉しいです。
村田:日常でも繋がっているというのは、Colaboが普段女の子たちと関わる時にも大事にしていることですよね。
仁藤:そう!うちらのことを忘れないで、忘れてないよ、ってみんなに思ってほしいから、ぜひゲットしてください。
村田:お箸もオリジナルグッズも、私も欲しいです。
今日はなぜ今、女性人権センターが必要なのかについて、お話しさせていただきました。
女性人権センター建設プロジェクトは趣旨に賛同する女性を中心に1000人委員会を結成し、ご寄付の呼びかけをしています。
次回以降、この対談では、仁藤さんが1000人委員会のメンバーと対談しながら「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」女性差別の現状を見つめていきます。初回のゲストは田中優子さんです。
仁藤:ゲストのみなさんとの対談、面白いし、励まされます。みんなが受けてきた女性差別とか、経験してきた痛みとか怒りを言葉にしてくださっているので、「ああ、先輩たちもこんな思いしてきたんだな」とか「いや、今でもそれあるよ」というような、共感にあふれる対談になっています。
女性人権センターも、そういうことをみんなでシェアできる場にしたいです。
村田:とても楽しみです。今日は仁藤さん、ありがとうございました。
女性人権センターの設立に向けたご寄付を募っています。
まもなく寄付キャンペーンがスタートします。
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社会からの攻撃・妨害に屈しないための女性運動の拠点「女性人権センター」を建設します。
2030年の完成を目指し、現在寄付キャンペーンをおこなっています。「女性人権センター」設立に力を貸してください














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