コラム
女性人権センター

Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、趣旨に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。
仁藤:今、声を上げ始めた女性たちに対してのバッシングがすごく強まっていますが、それについてはどう見ていますか?
浜田:これは日本に限らず、世界中でバックラッシュが起きてますよね。私自身は声を上げる時に、まず女性たちの分断を生まずに女性同士の連帯を作って、そして男性も味方につけていくことがすごく大事だと思っています。普段行っている企業の研修でもジェンダー平等やダイバーシティーの研修が多いんですけど、最初から自分たちが怒られるかもって男性管理職の人たちが身構えるんです。そうなると何も聞いてもらえない。だからまずは「あなたたち個人を責めているわけではなくて、システムの問題、構造の問題です」「構造に差別があるんだったら、そこを見直していきましょう」って言います。
仁藤:Colaboを攻撃している人たちの様子を見ると、自分が特権によって得てきた、女を買う事や女を蔑む人権侵害の権利を奪われたくないっていうような抵抗感を感じます。そういう男の人が、そういう反応になる自分自身の弱さに向き合えないこともすごく深刻な問題だと思います。
浜田:韓国のSRHR(Sexual Reproductive Health and Rights。性と生殖に関する健康と権利の意。)の取材に行った時にいろんなセンターの方へ、何で今韓国でこんなにバックラッシュが起きているのか聞きました。そうしたら、韓国は90年代ぐらいから既に日本よりもジェンダー教育に力を入れて、それこそ女性センターのようなものも日本よりできてるんですよね。女性の権利の回復、女性の被害の回復にすごく力を入れてきたから女性たちが声を上げるようになったし、ヤングフェミニストも育ちました。でもその時に男性の加害性のことだけ言い続けたから、「女性と違って徴兵にも行ってるのに、生きてるだけで性犯罪者扱いされるのか」って、男性側が負の感情を持つようになったんです。だから男性には、別にあなたが元々加害性を持っていたわけではなくて、そこを出さないためにいろいろな教育や環境の改善をしていく必要があるってことを言っていかないといけない。自分が持っている辛さを転化してさらに弱い人に向けるのはやめさせないといけないし、「あなたたちが本当に声をあげるべきところは違うんじゃない?」ってことをちゃんと言っていかなきゃいけないなと思います。
私、去年アイスランドにも取材に行ったんです。アイスランドはジェンダーギャップ指数が16年連続で1位じゃないですか。ジェンダー教育にはすごく力を入れていて、まず一般的な包括的性教育を小学生でやったうえで、15歳で受ける年間15、6時間のジェンダー教育では、男性の特権性や有害な男性性についてしっかり触れています。男の子の保護者からクレーム来ませんか?って質問したら、アイスランドでも性暴力の被害者は圧倒的に10代の女の子なので、加害者は10代の男の子ってなると、誰も自分の子どもを加害者にしたくないからって。だから親もぜひやってくれってなるんですよ。
そうは言っても北欧はポルノも盛んだから、最初はみんなスマホでレイプものも含めて見てしまうんです。でも性的同意のあるセックスとレイプは何が違うかを15歳でちゃんと教えると、だんだんポルノを見る時間が減っていくことがわかってます。あちらではポルノを見る時間やどういう内容のものを見ているかも調査しています。セックス自体を否定するわけではなく、性的同意のあるセックスとは何かを早いうちから男女共に話し合うことが大切なんです。
静岡県立大学の犬塚先生という男性学で有名な先生がされた、おもしろい調査があって。20代、30代に男女別で、「仕事と家庭どちらを優先したいですか?」っていう質問をしたんですね。それに対して、20代の男性で仕事を優先したいという人がなんと0%だったんですよ。ただ、その心を聞くと結構複雑で……その背景には地方男性の未婚率の高さがあったんです。もちろん今の若い男性の価値観の変化も表してはいるんですが、それと同時に女性たちがどんどん地方から流出している中で、自分たちはそうしないと女性に選ばれないという不安感がある。その不安感が暴走すると、攻撃性に変化してしまう場合があるんです。でも本当に結婚して子どもを育てたいと思うのであれば、「家庭を優先する」って短絡的に考えるだけではなくて、ジェンダーのことやパートナーになるにはどうしたらいいのかを、真剣に考えなきゃいけない。あと、男も一人で生きて行けよって思う。
仁藤:そうですよ、本当。
浜田:別に、パートナーがいない女性ってたくさんいるけど、その経験だけが全てじゃないじゃん。だけど女の人は別に買わないよね、他のことで人生を豊かにできる。
仁藤:今Colaboを攻撃している人たちからも、自分が女をあてがわれなくなることへの不安がすごくあるように感じられます。
浜田:別にそれがない人生だっていいじゃん。
仁藤:買春することを自分の権利だと思っていて、それを奪われたくないて思っている男たちの不安感に対して、私たちはどうしていけばいいと思いますか?
浜田:それはもう、「買春は犯罪である」ってある種の線引きをするしかないと思う。お金を払わない関係をどうやって作るか、いかに他のことで人生を豊かにするかってことだと思う。
仁藤:日本では男が女を買うことが当たり前の権利のように語られているし、そう思って育っている若い世代の中には、自分の好きなものを否定されたとか、好きでやってる子もいるはずだと言って、正当化しようとする少年もいるんです。女性を買わなくても対等な関係性を作れたり、女性を買うことで快感を得て自分の立ち位置を確認するんじゃなくて、自分は自分で生きていけるんだと思えたり……そういう生き方が男性も考えられるようになるといいと思います。
浜田:女性の側も「自分の体は自分の資本なんだから、どう使おうと勝手でしょう」「労働の権利でしょう」って言う人もいるじゃないですか。それを女の子たちに言われたらどういう風に話してる?
仁藤:特にコロナ禍以降、女性の貧困も広がって孤立化も進んでいる中で、「これは仕方がないことだし、自分の選択だから」って考え方をする子がものすごく増えてるんです。12歳で性売買を始めた子でさえそう思わされていることがある。大人になってからも、自分のこととなると「自分の選択」「自己責任」と思わされてしまうケースが多いんです。でも、先ほどの浜田さんの会社での経験と同じなんです。聞いていくと「本当はつらかった」「本当はあんな思いしなくていいならしたくなかった」「でも自分にはそれしかなかったんだ」って、みんな最終的には言うんですよね。だからそういう思いを話せるようにするために、自分が選択したのか、そうではないのかっていう「女性の選択の問題」にすることをまずはやめないといけない。
性売買の問題は、そこで起きていることが何なのかが、あまりにも知られていない。性売買の中で女性がどんなふうに扱われているのか、性売買があることで女たちが男からどんな風に見られてるのか、それに性売買女性とそうじゃない女性で切り分けられて考えられているけど実際には生活と地続きなこと、搾取の構造や現場で起きている暴力性などがあまりにも知られていません。
その中で主体的な選択かどうかっていうことだけの議論をして、最も得をするのは業者だと私は思います。好きでやっている女性もいるという言い方で、搾取の構造を覆い隠している。だけど私は、男に買われるということは自分の尊厳が脅かされることだって、多くの女性たちが本当は分かっていると思うんです。よく「性売買ってお金が欲しいんでしょう」「稼げるんでしょう」「遊ぶ金欲しさにやってるんでしょう」って誤解されるけど、実際は全然お金にもならないし、傷も増えていく。妊娠したり、病気になったりするリスクもある。
浜田:その場で暴力を振るわれる可能性もある。最近12、3歳ぐらいの女の子が地方に連れていかれて、1日十何人も客を取らされて業者が逮捕されたニュースがありましたね。本当にショックで、どんなに大変だっただろうと思う。しかもどんどん性売買の単価が安くなって、こんな値段でっていうようなところで買われて。
仁藤:高ければいいってことではないけど、あまりにも安く少女たちが買われているし、そこで何かあっても全て少女たちのせいになっている。性売買の中でも、例えばお店の中なら安全かっていうと全然そうじゃないんですよね。少女であるか大人であるかに関わらず、そこで病気になったり妊娠したりすると誰にも頼れないことがあるし、もっと高く売れるために整形を進められたりもする。性売買って整形業者とかもグルだから、セットでプランを作られることもあるんです。
浜田:借金を背負わされて、そのためにまた売らなきゃいけなくなってしまう。
仁藤:あともう一つ、性売買は労働の問題じゃなくて、人権の問題として考える必要があると思っています。性売買は若い時が一番高く売れる。スキルアップすると高い給料をもらえるようになるんじゃなくて、最初が一番高く売れるんです。そのことからしても、性売買は労働にはなり得ないと思っています。それは、男たちがいかに素人っぽい子を、未熟な女性を買いたいかということも表している。
浜田:しかも、労働であればちゃんと守られるセーフティネットがあるけど、セーフティーネットも全くないからね。
仁藤:そう、安全な性売買なんてあるのかな?って。
浜田:あり得ないよね。
仁藤:労働の問題で語る時に、「こうすれば安全」とか「性病検査をすればいい」という人がいますが、結局それは支配する側が管理する性売買なるだけなんです。実際に男と女が二人で裸になって、そこでどうやって安全が守られるんですか?って。監視カメラを使って挿入はしてないのかって全部確認するとか、そんなことは無理ですよ。男たちは女性の性器を触ることも当然してくるわけですから、そこで安全を守るってことは実現不可能です。でもその現実が多くの人には考えられていない。実際には今の日本社会だと多くの男性が風俗に行った経験があって分かってるはずなんですけどね。だからこそ、自分の加害者性に向き合わない、性売買の問題に向き合いたくないってことがあるのかもしれない。
性売買は女性差別の根底にある問題だと私は思っています。性売買や性搾取をテーマにColaboみたいに活動してると、すごく叩かれたり、「大変そう」「難しそう」っていうイメージを持つ人が、女性の人権問題に関心がある女性たちの中にもすごくたくさんいる。でも実は、そういうあらゆる女性差別とつながってる問題なんだって、多くの人たちに気づいてもらえるといいな。
浜田:やっぱり自分とは違う世界だって思うと関心を持ってもらえなくなるよね。だからこそ、これは女性全体の人権侵害であると気づいてもらえたら。たくさんの人に関心を持ってもらって支援が増えたら、それだけたくさんの女の子を救えるから……まずは物心ともに皆さんに協力してほしいですね。
仁藤:女性人権センターの建設に向けて、浜田さんには1000人委員会のメンバーにもなっていただいてますが、女性人権センターにどんなことを期待していますか?
浜田:私は場所があることがすごく大事だと思っています。困っている人が駆け込める場所というのが、あまりにも少ない。DV被害者向けのシェルターはできてるけど、若い女の子たちが一時的にでも逃げ込めるところ、安心できるところがあるといいなと思います。各地に男女共同参画センターはあるけど、行政の中の一組織なので、制限もあって使い勝手が悪そうなんだよね。自由に使えて、いろんなことができる、いろんな人が集える場所があったほうがいいなって思います。
仁藤:一緒にそういう場所を作っていきたいと思っています。
浜田:あと、女性人権センターができたらやりたいと思っていることがあって。女性って立場によってすごく分断されてきたけど、本当は女性というだけで共感し合えることがたくさんあると思うんです。そういう立場を超えて連帯する、シスターフッドみたいなものができないかなと強く思っています。例えば参政党が今支持率を伸ばしているけど、共働きの人が増えて働く女性も増えてる中で、専業主婦の人たちが取り残されたように感じている……そこをうまく利用したわけですよ。分断されると利用される、しかも男に。だから私は分断じゃなくて連帯をしたい。その連帯できる場所としての女性人権センターにすごく期待をしています。
仁藤:ぜひそういう場所にしたいです。いろんな立場や状況にある女性たちが集って、自分たちの共通のアジェンダ(課題)がどこなのかを考えて、一緒に戦略を持って運動していきたい。海外の事例をインタビューされてきた浜田さんのような方がいることで私たちもそこから学んでやっていけたらいいなって、ますます楽しみになりました。ありがとうございます。
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