コラム
女性人権センター

Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、趣旨に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。
第五回のゲスト、瀬戸大作さんとの対談の後編です。
仁藤:昔はもっと闘う団体がたくさんあったと思いますが、当時はどんな雰囲気でしたか?
瀬戸:闘う団体の活動家が現場にいたからでしょうね。現場の中に入って、一緒に苦しみを聞いて、一緒に福祉事務所に行く。でもこの数年間で、支援団体があまりにも現場に出なくなっている。支援団体が組織化され過ぎちゃっていて、支援団体の中で業務組織があって、現場に同行しているのはその支援団体のボランティアということもある。支援団体を官僚化してどうするんだろう。
仁藤:私も支援団体の人に、「仁藤さんって相談もやってるの?」って驚かれたことがあって、私はびっくりしたんです。「え、やらなくてどうするの?」って。むしろ自分が責任者でもあり、一人一人とちゃんと会って関わりをしないといけないのに。それがなかったら、モノも言えないはず。
瀬戸:現場がなくなったら、感覚がなくなると思う。うちも何人か相談員がいて、役割分担しているけど、例えば相談員が「今日こんな状態で大変だった」と言った時に、僕は現場をやってるから理解できるわけであって。数年間の関わりのなかで、社会の構造的な変化への実感を持っているから、今後のシェルターの運営の方針を考えられたりするわけじゃないですか。相談者の相談内容も、その時の社会状況によって変化する。そういうときに、自分たち自身がどこまでできるかわからないけど、一緒に考える中で自分たち自身も変わるわけじゃないですか。
そういう支援の在り方ではなく、「私たちの支援団体はつなぐことが役割なので、電話相談受けて、他のところにつなぎます」みたいなものが増えている。支援団体が組織化されて、細分化しすぎちゃっていて、結果的に相談している人たちが、たらい回しにあっているような状態になってしまっている。
仁藤:私も、夜の街での声かけや相談など、常に現場でやっていますが、街の状況や若い子たちの流行り、性売買業者のやり口はすぐに変わるので、常にその子たちに教えてもらわないとあっという間についていけなくなるし、そうなれば必要なアプローチがあっという間にできなくなる。現場感のない人たちが妙に資格だけ持っていて、東京都は「専門家を配置しています」とよく言うんだけど、その専門性というのはただお勉強したこと。そうじゃなくて、必要なのは現場で今何が起きてるのかを知る専門性と、闘うための力や経験ですよね。
そういう力を市民みんながつけていかないといけないと思うし、そういう活動をしているからこそ、Colaboは攻撃されるんじゃないかなって思います。
仁藤:差別や暴力に抗う女性や女性の政治家に対しても殺害予告があったり、ひどい攻撃やヘイトを浴びせられたりする今の状況はどういうふうに見ていますか?
瀬戸:僕は参議院選挙に出馬した大椿ゆうこさんが杉並の高円寺で集会をしたとき、男性がいろいろ言いがかりをつけてきた現場にいたんです。男性は明らかに大椿さんが女性の候補者だからやっていた。女性相手だから浴びせる言葉で罵倒していた。男性の候補者に対しては絶対言わないことだった。それに対して、大椿さん自身が、「私が女だから言っているんだろう」と言っていた。大椿さんがそういう発言したことに対して、僕もまた自分自身を振り返ることになったんです。
そこまでちゃんと主張していかないと、僕も含めて応援に来ている男性たちにも理解できなかったんだと。そこまで言わなければ、選挙で闘っていけないと、そういう状況を理解して、連帯しなければならないと思いました。
仁藤:市民運動も男社会じゃないですか。例えば外国人が差別されていたら、「外国人差別やめろ」ということを外国人だけに言わせるんじゃなくて、外側の人間がもっと言うべきだけど、大椿さんが女性差別を目の前でされている時に、周りにいたリベラルや人権を重視している男性たちも瞬発力がなくて、結局大椿さんが強く男性に向かっていかないといけない状況がある。運動に関わる男性ももっと学んで、女性差別反対の声を男性たちにこそ大きくしてほしいと思います。
瀬戸:選挙運動を通しても、男性活動家やリベラルと言われている人も含めて、我々(男性)自身の問題が垣間見えた。本質的な問題がそこにあるんだと、女性差別の現場にいて気づかされた。その場面を僕らは他の男性たちに共有しなきゃいけないし、語らなきゃいけない。
仁藤:私も若い活動家や政治的な発言をしている子たちから、リベラル界隈の男社会のしんどさ、それに無自覚なおじさんたちの気持ち悪さの話はよく聞くし、すごく共感できる。貧困問題に取り組んでいる人もだいたいおじさんで、今女性の相談も増えているとのことだけど、男たちの運動から始まってきているので、そういう男性たちとも一緒に変わっていけたらいいなと思います。
瀬戸:そのためにも対話が必要になってくるけど、そういう空間があまりにも社会に不足している。「女性人権センター」の話にもつながってくるけど、いろいろな運動の歴史を残すような活動も弱くて、学生時代に見学に行けるような空間も少ない。僕は原発事故の被害者の支援もしていますが、原発事故からもうすぐ15年になるけど、歴史が残っていないと原発事故の経験をしていない子どもたちが大人になって、福島のことを誰もわからなくなる。そうした時に、歴史が消されてしまう。例えば韓国では、日本の侵略で何があったのかということなど、人権的な博物館が色々あり、そこで人々が学べるようになっている。そうした活動が貧困問題でも必要だと思っています。
仁藤:私も「女性人権センター」を、今作らないといけないと思ったのは、一緒に闘ってくれる先輩に70代~80代の方が多くて、その人たちが数年、数十年後にいなくなっちゃったら、この先の社会で私たちはどうやって人権保障を掲げて闘っていけばいいのかって思ったから。自分自身も瀬戸さんをはじめとする闘ってきた先輩たちと出会うなかで、みんなの経験や過去の運動から学べることがたくさんあって、自分が今受けている攻撃がなんなのかもわかっていった。そういう出会いがあったからこそ、今自分も闘えているので、そういう先輩たちと若い世代が出会えるような場所にしたい。
過去の弾圧や闘いをなかったことにしないで、闘い方を繋いでいく、そういう人と人との出会いや関わりの場を作りたいです。今、社会問題や社会運動に関心がある子たちも「出会えていない」ということをすごく感じるんです。頭では大事な問題だとか、人権は大事ということが理解しているけど、共にあること、声をあげて闘うこと、駆け付けること、そこにとにかく「ただいる」ことが大事だったりすることの実感がない。そういう「あり方」とか、先輩たちのどしっと感、何があっても動じない姿にどうやってその人たちがなっていったのか、ということを想像したりするための「出会う」機会を持っていない人が多いと思うんです。
私がいろんな人たちに出会って力をもらったように、「女性人権センター」を通して、これからの時代を作る人たちとも、闘い方や生き様みたいなものも含めて、触れることのできる場にしたいと思っています。
今の社会は大人たちのせいでこういう状態になっている。私も「大人たちはロクでもない」っていう思いを持って、若い頃から活動してきたけど、そんな私も今では35歳でじゅうぶん大人なんです。この先どうやって次の時代をみんなと作っていくかと考えた時に、世代を超えていろんな人たちが学び合い、社会の現状を見つめて変えていくために声を上げられるような、揺るがない拠点を作りたいと思っています。
瀬戸:今回の参議院選挙のなかで、極右政党が出て来たじゃないですか。テレビで放送された参政党の集会でインタビューに答えている支持者の人たちはみんな非正規雇用で、貧困状態にあると言っていたんです。そして、参政党の演説を聞いて「スカッとした」と答えていた。
これまでは、支援をするなかで出会った貧困状態にある人はみんな「貧困状態に陥ったのは自分の責任なんです」と自己責任論を言っていた。それが、参政党の話を聞いて、自分たちが貧困状態に陥ったのは、参政党の言うように社会の責任なんだ、それは外国人のせいなんだと思うようになった。貧困問題が外国人のせいだなんて、今まで全然考えてもいなかったことが争点になったんです。
でも、実際に活動で居場所の支援を行っているなかでは、参政党の話になることなんてない。それは、関わりのなかで、差別の問題や社会問題の話もするし、自己責任ではないということを話したり、社会問題に関する映画鑑賞会に行ったりしているからだと思うんです。貧困や孤立の問題やこれからの社会について、どのようにみんなで話ができるか。それを相談者の人たちや居場所に来ている人たちも含めて考えていく。そういう場所が必要だと思っています。そうした場づくりをしっかり考えて行かないと、参政党の今の動きに対抗できない。
だからこそ、仁藤さんたちが立ち上げようとしている人権センターのプロジェクトの1階から5階までのイメージを見させていただいて、どれも全部欠かせないなと思っています。闘う拠点も必要だし、居場所も必要だし、時には住居が必要だし、これらが並立して同じ場所にあることが非常に大事だと思います。
韓国に行ったときに思ったのが、NPOがそれぞれ独立した形でバラバラに拠点があるのではなく、例えば一つの拠点があって、いろんな機能を持っている。相談したい、シャワー浴びたい、寝たい、働きたい、遊びたいと、色々な人がいて、一階に食堂があり、上の階に医療ケアがったり、複合的的な機能がある。そういう住民運動のビルが、ソウルにもたくさんあって、僕もずっとやりたかった。
女性人権センターの構想で僕がすごく大事だと思ったのは、反性搾取ライブラリーでしっかり伝えていくこと。その機能があることによって、例えば1階に物販を買いに来た人が2階でライブラリーを見て啓発されるような空間を維持すること。生活保護を受けることを拒絶している人がシャワーを浴びに来たけど、他の階にもいろいろな空間があるんだと思って行ってみたり、循環する、だけれども強制されない空間。これは夢がある。
仁藤:生活保護を拒絶する人がいたとして、その原因は社会に問題があるんですよね。そういう状態でも「女性人権センター」にきて、とりあえずシャワー浴びて、私たちと話をするなかで、そういう問題を変えていきたいと思っている人たちと出会ったり、自分は一人じゃないんだ、生活保護を利用しても怖い行政に支配されるわけじゃないんだと思える関係性ができれば、制度も使いようかなと思って支援を利用できたりするかもしれない。
瀬戸:頑張らせないことも大事だよね。だらだらしていてもいい空間。「女性人権センター」の構想を見れば見るほど面白いね。大事なことばかりで。「女性人権センター」は、すごい住民連帯運動になります。そして、このことが、他のいろんな運動を触発すると思う。
たった今も、支援している難民の人たちが次々と強制送還されているんです。入管庁も不法滞在外国人を犯罪者のように扱う。そうしたときに「それは違う!」と、空間として視覚的にも確認できる場所が存在することが大事。当事者同士の出会いも増えて、世論に訴えていくことができるような、対抗文化をつくらないといけないと思っているんです。
仁藤: 私たちも性搾取の問題に取り組んでいると、大変そうで暗い、怖い人に脅されるイメージで腰が引けるような人たちがたくさんいますけど、根底は女性差別も外国人差別も貧困運動も、同じ問題。そういう人たちが出会って、同じ問題なんだと理解して、みんなで学び続けて、声を上げられるような運動の基盤が、今の日本社会で、失われている。
今回、選挙における参政党の差別煽動に対して、NGOが数百単位で一緒に声明を出して、Colaboも賛同しました。そういう連帯をもっと広めていきたい。それは活動している人だけではなく、少女たちの中にも。
少女たちもSNSで外国人差別を煽動するインフルエンサーの投稿を目にしていて、デマを信じていたり、差別意識を持っていたりする子が増えています。入管による人権侵害について話したり、外国人による犯罪が増えているというデマについて事実に基づいて話をしたり、デマや差別を煽動する人たちの目的について話をすると「そういうのってどこで知るの?」と言ってくる。Colaboに対するデマや誹謗中傷を目の当たりにしてきた少女たちですら、別の差別についてはデマに影響されてしまうということが起きています。
差別を煽動する人たちの求心力に対抗するためには、差別やデマの煽動者とは違うやり方で私たちが出会い、一緒に考えること。差別や暴力に抗うためにこの「女性人権センター」が必要だと思っています。
このセンターができたら終わりではなくて、できてからも闘うし、そして各地にそういう拠点がいくつもあるような社会にしていきたい。
瀬戸: 女性人権センターがある意味、火をつけるよね。その拠点があることでごちゃ混ぜになって、そういう空間で出会い、会話をして、例えば難民の人に逃げるときにどんな苦しみがあったのかを聞いて、それを知った別の相談者が、自分も生活が困窮して苦しいなかにいるけど連帯したいと思う。そういう拠点が必要だよね。
仁藤:Colaboが夜の街で開催している10代の少女向けのバスカフェでも、「反貧困ネットワーク」のおとなりカフェで難民の方が作ったお弁当を購入して、提供していたことがあって。そうするとバスに来た少女たちも、例えばアフリカの人が作った料理とか、食べたことをないものを食べてその味を知るし、その料理を作った人たちの背景を知ることにもなって。そうすることで自分が今置かれている苦しさが何なのかということも、時間をかけて見えるようになってきたりもする。そういう交差性のある活動を広げていきたいと思います。
瀬戸:若手活動家の拠点、これもすごいよね。なんでこれが大切だと思ったんですか?
仁藤: 私自身も活動を始めた時大学生で、人権活動したらこんなに攻撃されると思っていなかったんですよ。もっと純粋だったし、良いことだし、必要なことだからって思ってやっていたのに、人権を侵害したい側の人たちの権力が凄まじいことに、気づいた。自宅に変な人が来たり、脅されたり、様々な目に遭ってきたので、そういうことに怯えなくていいような、住所を置けたりポストを貸せたり、机一つからでも活動を始められる場所を作りたい。最初はお金もかかるじゃないですか。事務所を借りるにしても。若い子たちが最初の負担なく活動を始められて、そこから活動を育てていけるような場所が欲しいと思ったんです。
それと、若くして活動を始めると、教えたがりのいろんなおじさんが寄ってくるからそういう人たちにヘコヘコしなくてもいいように、みんなで対等な関係を作れる、知恵を寄せ合う、一緒に社会課題への取り組みを考えていける拠点を作りたいなと思っています。
瀬戸:すごい期待しています。
仁藤:これからもっと排外主義がひどくなって、差別や暴力が蔓延してくると思うので、それはおかしいと思っている人たちが、若くても若くなくても一緒に声を上げられるような揺るがない拠点を作る必要があると思っています。
東京都と事業をやっていた時に感じたのは、行政は守ってくれない。追い出されちゃうってこと。そういうことがあっても、「私たちは最後の一人になっても闘うぞ」っていうような自分たちの拠点があることで、みんな頑張れると思うんですよね。だから、そういう場所を「女性人権センター」で作っていきたいです。
瀬戸: 応援します!
仁藤:今日は瀬戸さんから活動の話をたくさん聞いて面白かったし、現場で活動している人たちは同じようなこと考えているんだなと実感しました。あまりにもひどい状況の日本社会で「女性人権センター」を実現するのはとても大変だと思いますが、ぜひ皆さんと一緒に形にしていきたいです。
瀬戸:僕もこれ、実現できるかわからないけど、この前三里塚に行ってきたんです。当時、過激な問題だと思った人もいたかもしれないけど、僕らが当時運動したときには、「空港よりも緑の大地を」をスローガンに、自主耕作運動、一坪共有地主、団結シェルターという運動があったんです。今、難民の人たちの支援をしていて、働くことが認められない、医療を受けることもできない人たちと関わっているけど、働いていないと食べていけないじゃないですか。それに対する闘い方として、働いちゃいけないんだったら、自分たちで生産したり、自分たちでヤギ飼ったりしてもいいだろうと。そういう運動を力強く作りたいと思っているんです。今の難民排除に対して、単なる抵抗ではなく、ちゃんと闘う砦をつくっていく。闘う中身も豊かにならないといけない。おいしいものを作って、ヤギのミルクを絞って、そういうことをやりながら闘う。
仁藤:生きるってことですよね。
瀬戸:そう、生きる。なんでかっていうと、生きているからね。生きていることは辛いことがたくさんあるかもしれないけど、その中で楽しい瞬間もいっぱいあるということを、リベラルや社会運動がしっかり作っていかないといけない。シュプレヒコールをあげることも大事だけど、運動のなかに、自分たちの豊かな生き方を一歩ずつ作っていくことをやりたいなと思っているんです。
「女性人権センター」も、これができたら「いっぱい楽しいことがあるよ」と言えて、「やっぱり生きてたいな」と思えるような、そこにいくとほっとするし、何かいいことありそうだと思える場になると思います。そういう活動を、一緒に連帯してやれたらいいなと思っています。
仁藤:ぜひやりましょう。私も家が安心して過ごせる場所ではなくて、高校を辞めた後に、人権活動をやっている人がやっていた畑にいって生気を取り戻したんです。そこに難民の人が来たり、DV被害に遭っている人が来たり、三里塚で闘争していた人が来たり、自分たちが作った野菜を山谷に送ったりしていたんです。私もそういうところで10代の時にいろんな経験をしたし、闘う人たちと出会ってきました。「女性人権センター」は歌舞伎町の真ん中でやろうと思っているから、大きい畑は作れないけど、瀬戸さんたちが畑を作ってくれたら、歌舞伎町でつながる少女たちも一緒に行きたいなと思って。
瀬戸:最高!最高。飛行機がバンバン飛んでいて、これなんだ?と思ったりしてね。
仁藤:そしたら、三里塚闘争の話を聞いたりね。
瀬戸:そうやって引き継いでいく。楽しそうだな。楽しそうだ!
仁藤:そうですね。楽しく!私たちはいつも大変な活動してると思われているけど、めっちゃ楽しいですよね?
瀬戸: 疲れてる、疲れてる(笑)
仁藤:疲れてるけど、楽しいです!(笑) これからも皆さんと一緒に頑張っていけたらと思っています。一緒にこの構造を変えていきたいと思います!
瀬戸:変えましょう!頑張りましょう!!
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