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女性人権センター

Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、Colabo代表の仁藤が女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」のメンバーと対談し、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。
第七回目のゲストは、前田佳子さんです。
前田佳子さんは医師で、2022年5月から公益社団法人日本女医会の会長を務められています。女性医師のキャリアの継続支援や、働きやすい職場環境の整備、男女共同参画の推進をリードして性差別や制度的な偏見の撤廃に取り組まれています。また、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」の共同代表としても反戦の活動も行っておられます。
仁藤:Colaboが関わる少女や女性たちの中には、お金や保険証がなかったり、病院に行くハードルが高かったりしてなかなか医療につながれない子たちもいます。前田さんは医師の立場から、Colaboの活動についてどのように見られていますか?
前田:私がColaboの存在を初めて認識したのは、2022年の暇空茜による誹謗中傷がきっかけでした。 Colaboや仁藤さんが訴えられているのを知って、こういう活動をされている団体があるんだと初めて認識しました。
仁藤:最も妨害がひどかった時には、「Colaboが何か悪いことをしてるんじゃないか」っていうデマも流れていました。そんななかで私たちに連帯し、いち早く支える会のメンバーになってくださったことを、心から感謝しています。
前田:せめて気持ちの上だけでもサポートできたらいいなと思って、声を上げさせていただきました。
最近は、Colaboの理事をされている田中優子さんや、「女の壁」でも活動されている菱山南帆子さんなどといろんな場面で一緒に活動させていただくことが増えてきていて、「みんなで手をつなぐ」ということはすごく大事だなと思っています。
Colaboの活動では、 夢乃さんが自分の体験を通して、同じ目線で今の困っている少女たちをサポートされていますよね。そのことがすごく素晴らしいなと思っていて、心から敬意を表したいです。それを非難したり妨害したりする人がいることが私の感覚としては信じられません。昨年は能登での震災の直後、翌月から現地に入られてサポートもされていて、なかなかできることじゃないなと思いました。
仁藤:普段は虐待などで家に帰れなくて、児童相談所を含めた公的機関で適切に対応されずに大人への不信感や諦めから路上に出ている子どもたちを支える活動をしています。でもそういう子たちに関心を持つのって、性売買の業者か買春者ばかりなんですよね。
震災があった時も、親を亡くしたり収入を支えていた大黒柱的な人が亡くなったりして困っている女性や子どもたちがいるところに、性売買業者が入り込みました。能登では1月2日から性売買業者とつながる人たちが炊き出しをしていました。そういうところに私たちが入っていって姿を見せることで、業者はやりづらくなるんです。女性たちにも「何かあったときに、ここに行けば話を聞いてもらえる」って思ってもらいたくてやっています。
前田:災害が起きたときに避難所で性虐待が起こることはよく聞く話だけど、そういう業者が入ってくることは私も認識してなかったので、勉強になります。
前田:今回仁藤さんと対談するにあたって、医療者としてどんなことができるのか今一度考えてみました。それで、誰でも相談できる窓口が医療機関にあるべきだと改めて思いました。もちろん性被害のこともあるけれども、それ以外の体調の悪さや精神的な悩みに幅広く対応できる窓口が必要なんじゃないかな。
仁藤:私たちが出会う子にとっては、病院にかかることが当たり前のことではないという前提があります。そもそも具合いが悪くても我慢することで生き延びてきているから、普通だったら布団で寝ていたいって思うような時でも活動できてしまうんです。親から虐待されていると、体調が悪いと言うと面倒くさがられるんです。私自身も10代の頃そうでしたけど「また金がかかる」「体調管理がなってない」と言われるから、我慢して言わずに耐える。
そういう環境に身を置いていると、病院に行くこと自体ハードルが高くなるし、行った時にも迷惑にならないように振舞って、症状をちゃんと説明することが難しくなります。病院の先生たちも若い子と身近に接したことがない人も多いから、そういう振る舞いを見て嫌な顔をすることがある。女性たちは、その空気を感じ取るから、次の受診がさらに難しくなるんです。
前田:未成年ということも受診のハードルをあげるんじゃないかな。
仁藤:そうですね。親の保険証を使うとどこの病院に行ったかバレてしまうこともあるし、そもそも自由に使えるお金がない。そういった面で医療にかかるハードルはすごく高いですね。
今だと新宿・歌舞伎町の「トー横」で、妊娠したかもと思っている子たちに「緊急避妊薬をあげる」と言って本物かどうかわからない薬を渡す、そして見返りに性行為を求める男性がいたり、風邪薬をたくさん入手してそれを子どもたちに渡したりする半グレ組織の大人がいたりする。病院に行くよりもそういう人たちが気軽にものを与えてくれる存在になっちゃって、それで体調が悪くなったり、たくさん薬を飲んで OD(オーバードーズ)したりする子もすごく多いです。だから専門家たちがそういう困難な状況にある、苦しみを抱えている子どもたちの近い存在になってくれたらいいなって思います。
前田:まずはそういう子たちがいることを認識として持ってもらうことが必要だし、医療側としても、その上で窓口のようなものを広げていきたいです。
仁藤:性被害や性搾取の被害を受けて、心身の状態が良くない人ほど、時間通りに動くことが難しかったり、病院の予約に間に合わなかったりすることはよくあります。メンタルの調子が悪くなって「どうしよう」って思っているうちに時間が来てしまったり。このような状況を当たり前の前提として、理解を広めていきたいと思います。Colaboが連携している病院も、できるだけ時間を調整してくださったりはするものの、そういうことが続くとどうしても「また?」みたいな感じになって、怒られることが多いんですよね。医療を必要とする人ほど病院にかかりづらい状況にあります。
前田:私が会長を務めている公益社団法人日本女医会は、2001年から7年の間に独立行政法人福祉医療機構から助成金をいただいて、「十代の性と健康」指導者養成講座をやっていましたし、若者の性の健康支援ネットワーク、通称「ゆいネット」を立ち上げて関わっていた時もありました。その中で地域のワンストップセンターの立ち上げに関わっていた方もいらして、そういうことが病院単位でもできるといいなと思いますね。
仁藤:医療従事者や医師の方々が、弱い立場に置かれている女性の人権や性暴力被害について理解することは必要だし、心強いことだと思います。
未成年の女の子が妊娠したかもしれないと思って婦人科行った時に「なんでそんなことしたの?」って怒られたり、「親と一緒じゃなきゃダメだから親に話してきなさい」と言われたりすることも多いんです。ほとんどは男性医師の病院なんですけど、それで病院が怖くて行けなくなっているうちに、中絶できない状況になっていた子もいます。そういう状況で一人で来ていることには何かしらの事情があるんです。親と話せない状況にあること、不安があること、いろいろな背景に目を向けて関われる人が増えてほしいと思います。
前田:ありがちなのは、そうなったのは「その女の人が悪い」っていう自己責任的な考えで責めてしまうこと。例えば服装が悪いとか、行ったのが悪いとか。「なんでそんなことしたんだ?」って責めてしまう人がすごく多いんじゃないかなと思うんですよね。基本的なこと分からないまま自己責任論で片付けてしまうから、理解が進まない。
仁藤:そうですね。分かっていないことを受け入れることが、特に医者にまでなった人にとっては難しそうな気がします。
前田:日常的に家に帰れない、食べるものがない、そういう環境に置かれていることが想像の片隅にもないんだと思います。
仁藤:Colaboで関わっている若い女性の中に、数年前に初めて医学部に行った子がいました。でもそれは虐待の中で、本人が本当にそれを選択したかっていうとそうではなくて。その子のお家はお金はすごくあるんだけれども、その子のためにはお金を1円も使ってくれない。高校生の時から教科書代のために夜の街で稼ぐしかなかったんです。
医学部に行くような人たちの生活状況と、私たちが普段関わっている子たちの状況って全然違う。その子には「医者になりたいわけじゃなければならなくてもいいんだよ」って私は言っています。でも、そういう経験を持った人が、困難な状況にある人の目線で理解ある人が医者になってくれたらすごくいいなとも思うんです。
弱い立場に置かれたことがなかったり、生活の中で困ったりした経験があまりない人たちが医者の世界には多いと思うので。その中でどうして前田さんは痛みがわかるんですか?
前田:私も、社会のいろんな動きにはすごく疎い人だったんですよ。いろんな事を考えるきっかけになったのは、東日本大震災ですね。東京が放射能被害に直接あったわけではないけれども、電気の使用制限とかいろんなことがあったじゃないですか。今まで普通にできていたことが制限されて、あの時に、当たり前のことって当たり前じゃないんだなって気付かされました。それから福島のことが気になっていて、だんだんそういう活動をしている知り合いができてきて、最終的には原発の中にも入って見させてもらいました。その頃からもうちょっと広い視野を持たないといけないなと考えるきっかけにはなったかなと思います。
仁藤:私も東日本大震災の後にColaboを立ち上げました。同じ頃からこうやって活動されて声を上げているんですね。いろんな活動をされる中で、なぜ女性差別の問題にも取り組むようになったんですか?
前田:医療の現場って、今は随分変わってきていますけど、女性には厳しい環境なんです。2018年に医大が女子の合格者数を恣意的に抑制していた不正入試がクローズアップされましたよね。
私が入学した頃って、うちの女子大以外の大学は女子学生の比率が大体 1割くらいだったんですよ。その後だんだん増えていったんだけども、20年くらいずっと30%前半しか女性が入学できなくて、なんか変だよねって思っていたんです。だから読売新聞がスクープした時に、世間があんなに驚いたことの方が私には驚きだったんですよ。あの時の社会の反応は、私たちの想像を何倍も超えるほどの大きさで、そっちが驚きだったかな。
仁藤:それだけ、女性差別が当たり前の世界?
前田:そうですね。今でこそセクハラやパワハラが、ハラスメントだって言われるけど、私が医者になった頃なんて、通りすがりにおしり触られることは普通にあったし、そういうものかなっていう変な刷り込みがあったんです。
仁藤:「やめてください」って言えるような環境ではなかった、上司のほうが偉いから言えないということですか。
前田:今だったら「やめてくださいよ」って言うけど、その頃は言えませんでした。女性の数も少ないから、ますます言いづらくて。
女性の先輩もいたけど、その当時はそういうことは大っぴらに言える雰囲気じゃないから相談もしにくかったし。そういう意味では今、いろんなことが「それは良くないよね」ってはっきりしてきていて、随分仕事もしやすくなっているんじゃないかなと思います。
さすがに医学界や病院、大学病院でも女性を増やさないといけない、女性を増やしていこうという動きは出てきてはいるんですよ。でも、それに対する反発もあって「なんで女だけ特別扱いされるんだ」っていう空気の人たちもいる。
仁藤:いや、「今まで男が特別扱いされてたんだよ」って思いますよね。
前田:そうなんですよ。そもそも男の人は高い下駄を履かされていて、私たちは低いところを 歩いてたわけじゃないですか。そもそも同じ土俵に立ってないのに、「女性だから優遇されてる」とか、わけのわからないことを言う人が未だにいる。そうじゃない。今まだ全然同じ高さにいないって思うんだけども、そういうところをまだ分かってない人たちもいる。
仁藤:分かってもらうためにも、例えば「女性の医師を何割に増やそう」という形で制度やルールを作ってプレッシャーをかけることは効果的でしょうか。
前田:確かに2018年に入試の不正問題が報道されてから、女子の医学生は今大体平均で 40%前後ぐらいまで増えてきています。でも問題はその先ですよね。せっかく医学部を出て医師になるんだけども、その先の勤務環境、働く環境の整備はまだ追いついてない。だから女性医師の比率ってまだ23%ぐらいなんです。でも医学生の比率は今4割前後になってきているから、これがずっと続けば、いずれ女性医師も4割になる日も来ると思います。ただ仕事を続ける環境はもう少し整備されないと辞めちゃう人もまだまだいるかなと思います。
仁藤:女性が医師として働く時には、どんなところが大変なのでしょうか。
前田:いろいろ改革しようとはしているんだけども、女性が子育てや家事をしながら 仕事が続けられるようにしなくちゃいけないっていう発想はまだあんまり変わってないんです。性的役割分担が根強くて、意識が改善されてないと思うんですよね。「出産は女性しかできないけど、子育ては男女かかわらずできる」っていう考え方になっていなくて、子育てや介護という問題が出てくると、女性が休むのが前提になっちゃうわけですよ。だから「女性が子育てや介護をしながらでも続けられる職場の環境」みたいな、ずれた設定が既にあるんです。ここを変えていかないと、女性が医師の仕事をずっと続けていくのは難しいんじゃないかな。せっかく子育てが終わって、やっと自分の仕事に集中できるかなと思ったら今度は介護が始まるってことになると、いつまでたってもそこから抜けられないと思うんですよね。
仁藤:医者のようなエリートに見える女性たちも、同じ社会構造の中で、自分の人生を歩いたり自分のキャリアを積んだりすることが難しい状況に置かれているんですね。前田さんをはじめとする医師の方々が、路上にいて、性搾取の中にいて、中学校も行けてないような子たちと、女性差別や性搾取の問題を同じ問題として連帯してくれることの意味を改めて思いました。
今の医師界の現状がどうやって変わったかと言ったら、2018年に多くの女性たちが怒って声を上げたからですよね。医師の世界だとそれが当たり前だったのに、外側の人たちが一緒になって「そんなのとんでもない」って怒った。その業界の人だけじゃなくて、みんなで連帯して声を上げることが社会を変える力になっていくって実感しました。
今の日本社会の女性差別の現状っていうのは、前田さんはどう捉えていますか?
前田:ジェンダー平等に関して、日本って残念だけどだいぶ遅れてるなとつくづく思います。毎年6月か7月になると、世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数が出てくるじゃないですか。日本の順位は全然上がらないですよね。去年女性議員が増えたからちょっと上がるかなと思ったけど、あんまり。
仁藤:日本は148か国中118位、G7(先進7か国)の中では最下位ですね。
前田:女性差別撤廃委員会、国連の方からも勧告を受けていて、日本審査でも改善しろって言われているのに、あまり話題にもなっていないですよね。昔より良くなってるっていうのは、確かに良くなっていると思うんだけども、「でも世界はもっと頑張ってるんだよ」っていうところが、日本政府には響いてない。
仁藤:基準が低すぎる。
前田:世界を見たらもっと良くなっているから、いつまで経っても順位が上がらない。やっぱりもっと真剣に取り組んでほしいと思うんですけどね。
仁藤:若い子たちの医療へのアクセスもそうだし、アフターピルの問題もそう。女性が避妊したいと思った時に、アフターピルがすごく高くて手に入りづらいんです。女性たちが運動して改善を求めると、病院の男性を中心とする医師たちが反対してくるようなこともある。
前田:そうなんですよ。今回、アフターピルが薬局でも買えるようになって、医師の処方が必要ないってことになったじゃないですか。それはすごく良かったと思うけど、でも結局、身分証明書が必要だったり、1錠がやたら高かったりする。海外だったら1000円前後、国によってはタダで配ってるところもあるわけですよ? それを何千円で売っている。医師の処方がいらないのに、何でそんなに高いんだろうって思います。
仁藤:アフターピルを買うために体を売る子がいるんです。妊娠したと思って。
前田:本末転倒だよね。そもそも産婦人科の団体も、上の方にいる人はみんなおじさんだから。たまに女性がいてもおじさん化した女性なので、結局事態は変わらない。あとは彼らの懐にお金が入るっていうこともあるんじゃないかな。
仁藤:アフターピルを薬局で買えるようにしようっていう運動に対して、産婦人科医のなかにも「そんなことしたら女の子が気軽に性行為をするようになる」って、女性の貞操感の問題にすり替える人たちがいます。でも現実では女の子たちが性暴力の被害にあったり、パートナーとの性行為で相手が避妊してくれなかったりすることが、当たり前にあるんです。自己選択としてちゃんと避妊ができるようにってことなのに、それを「女性の権利」じゃなくて「女性の管理」「性的逸脱の問題」だと思って捉えている人が、産婦人科医のなかにも多かったんですよね。
前田:当事者目線に全然立てていない。今回、薬局で買えるようになったことは大きな一歩だと思っています。大切なのはこれからどうやって値段を下げたり、身分証明書の問題を解決していくか。だって身分証明書だって、年齢によっては持ってないじゃないですか。
仁藤:結局それではアクセスしにくいから、誰かが代わりに入手したものを不正に高く売りつけられることもある。買春オヤジが女の子に「アフターピルあげる」と言ってレイプの対価にしたり。もらった薬が本物かどうかも分かんないのに、その子たちは信じるしかないから、仕方なく飲んでいることもあります。
前田:そういうことがないようにするためにも、ちゃんとその子たちが自分で避妊できる環境を作っていかないといけない。そもそも、非難されるべきは避妊しなかった男なんじゃないの?
仁藤:そうですよね、本当。
前田:日本では、まだ堕胎罪の問題なども解決していないし。こういうところに差別の片鱗、いや、差別の根本がずっと残っていますよね。
⋆堕胎罪:妊娠中に人為的に胎児を母体から外へ出すことを罰する刑法の犯罪。堕胎罪は、主に「女性のみを処罰対象とすること」「配偶者の同意を要件とすること」「国際機関が求めるリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に反する可能性」の3点で、問題を指摘されている。
社会からの攻撃・妨害に屈しないための女性運動の拠点「女性人権センター」を建設します。
2030年の完成を目指し、現在寄付キャンペーンをおこなっています。「女性人権センター」設立に力を貸してください














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