コラム

女性人権センター

対談|第7回(後編)前田佳子×仁藤夢乃「『現場を知らない大人たち』の身勝手な偏見」―なぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、趣旨に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

(前編)「『まずは知ることから』変化を導く連帯の拠点へ」はこちら 

エリート層の無理解と勘違い

仁藤:他にも医学界の中で感じる女性差別には、どのようなものがありますか?

前田:もちろん専門分野によってだいぶ違うとは思うんですよ。女性医師の比率って、例えば外科系だと少ないけど、内科系だと比較的多い。マイナー系って言って、例えば眼科とか耳鼻科とかね。そういうところは比較的女性が多いとかっていうのはあるんです。

だから、環境が必ずしも一緒じゃないのですが、例えば女性の役員を増やしていくことに対して、すごく積極的な団体もあればそうでもないところもあるんですよね。学会場でそういうことをアピールすると、「女性だけ優遇するのはおかしい」と、未だに手を挙げて発言するおじさんとかがいて。

仁藤:手を挙げて堂々と言っちゃうのは、遅れてるっていう自覚もないからでしょうね。恥ずかしいって思えない。

前田:やっぱり根の意識がまだまだ変わってない。例えば、日本医師会という、かなり国会議員も出していて政治活動もしている団体があるんですが、そこの理事は女性の比率がすごく低いんですよね。そこに率先して女性を入れていくっていう活動は必要なんじゃないかなと思うんです。見本になってもらわないと。

仁藤:10年近く前、自民党のプロジェクトチームに呼ばれて少女性搾取の実態を話したんです。そうしたら、産婦人科医で、当時国会議員だった赤枝恒雄氏が首を傾げててね、「性被害っていうのはお母さんと娘の関係がちゃんとできてば起きないんだよ」って言われました。びっくりしちゃって、「どういうことですか?母親は関係ないと思います」って言ったら、「お母さんが遅くとも5時までに家に帰る。それで子どもたちに愛情を注いでご飯を作ってあげる。そういうことがあれば性被害なんて起きないんだよ」って言われたんです。
それ聞いて当時は、ポカーンってしちゃって。私がその土俵に乗るのもおかしかったんだけど、その時はとっさに、「いや、5時に帰れるお母さんなんてほとんどいないっていうか、共働きしてたら難しい」って言ったんです。そうしたら「そんな特殊な事例を具体例にあげちゃダメだよ」って言われました。共働き家庭は、全然特殊じゃないですよね。

ほかにも、立憲民主党で当時の国会議員だった医師がColaboに視察に来た時もすごい偉そうな態度で……「僕はこの辺のことはよく知ってるんだよ、この辺のお店とかもよく行くから」「お姉ちゃんたちからも相談とか受けてるんだよ」って言うんです。それは、女性が客として来たおじさんを立ててあげているわけなんですが、頼られてるって勘違い。若い女性にお金を払ってお酌させたり相手させたりすることを恥だとも思ってなくて、むしろその「女の子に頼られてる僕」と思ってる人が、医者でもあり議員にもなっている。このことに今の日本の状況がよく表れてるなと思いました。

海外では、自分が夜の店で女性を買ってるとか、女性にお酒を注がせてるとかっていうこと自体、バレたら議員を続けられなくなるレベル。でも日本ではそういうことが堂々と行われているんですよね。

前田:男の甲斐性的な意識がまだまだあるんですよね。

仁藤:自分には女を踏みつける権利があるって思ってる人がすごく多い。踏みつけている自覚もないんですよね。

前田:やっぱり意識改革が必要だなって思います。

現場を知ることでしか見えない少女たちのリアル

仁藤:女性差別に抗って声を上げたりすると、攻撃受けることがあります。「女性の人権が大事だよね」っていう当たり前のことに対して攻撃が強まる、今の状況をどう捉えています?

前田:やっぱり「ジェンダー平等」に進もうということに対するバックラッシュだと思っています。
30年前、北京で開催された世界女性大会で「女性の権利は人権である」と言われたにもかかわらず、30年いったい何してたんだろうと。日本だけじゃないとは思いますけど、もっと女性の権利、人権というものを前向きに捉えて行く必要があると思っています。今回の人権センターも、こういう状況であればあるほど、必要だと思います。 

仁藤:女性人権センターはいろんな女性たちが立場を超えて、痛みを共有できる場にしたいと思っています。そして、女性差別の現状をどう変えていけば良いのかを一緒に考えて、連帯できる場にしたい。

前田:職業や年齢を超えて、本当にいろんな人たちと交流できる場になればいいですね。交流することで新しい気づきもあると思うし。あとね、今日もいろいろ教えてもらいましたけども、やっぱりまだまだ知らないことがたくさんある。どういうところに手を差し伸べなきゃいけないのかっていうことも、まだまだ分からない部分があります。だからそういうことを知るきっかけにもなればいいなって思います。

そして困っている人たちが、安心して相談したり、泣きついたりとかできる……家庭にそれが求められないのであれば、より一層そこを受け止める懐みたいなものが必要だと思うから。そういうものになっていったらいいですよね。

仁藤:ぜひそういう場にしていきたいなって思います。

Colaboの支援者の方たちは、自身もいろいろなことで困った経験があり、共感している方が多く、お金がいっぱいあるわけじゃないけど、しわしわの1万円札をなんとか握りしめて寄付してくれるという方も多くいます。そうした思いと資金に支えられていることはColaboの強みでもありますが、女性人権センター建設のためには10億円が必要なので、路上をさまよっている若い子たちの生活とか背景を、想像しづらい人、そうではない暮らしをしてきたような人たちに、もっと理解して応援してもらいたい。

前田:そうね。そのためには、現実を伝えていくしかないと思います。Colaboでは「夜の街歩きスタディーツアー」も開催されていますよね。そういう現場を見たら気持ちは動く人は多いはず。
医療の世界でもそうなんですけど、例えば患者さんの苦しい病気の状況を実際見ると、教科書で勉強しているのとは違うっていうことがわかるんです。教科書にもいろんな事例がいっぱい書いてあるけれども、でもやっぱり直接見るのとは全然違う。だからいろんな人に現場を知ってもらうっていうことはすごく大事だと思います。

仁藤:ぜひ女医会の皆さんにもツアーをさせていただきたいです。夜の街歩きスタディーツアーで私たちと一緒に街を歩くと、どれが性売買の業者でどれが買春者かっていうのがわかるようになりますよ。(※詳しくはこちら)

 前田:えー!そうなの?

仁藤:はい。Colaboの拠点のすぐそばにも、100人、200人と毎晩性売買の業者がいて、買春者は少ない時でも2、30人はいて、多いときは100人以上います。毎日歌舞伎町にいて、女の子を買うつもりがないのに、女性たちにずーっと話しかけるおじさんとかも。少女たちを売春させるために立たせてる業者や、見張りの男たちも、歩けばすぐに見つけられます。

性売買を斡旋するスカウトもかなりの数いて、それが歌舞伎町だけじゃなくて、渋谷にも池袋にも横浜にもいろんなところにいる。本当はそれと同じぐらい、体を売るしかない状況にある女性たちを福祉やそのほかの選択肢につなぐ人がいなければならないと思っています。「お腹すいてるならこういうものがあるよ」「仕事なら……」「住むところなら……」って、街を歩くだけでも体を売る以外の選択肢を女性が手に入れられる社会にしたい。

今はその逆で、例えば新宿駅から歌舞伎町までの短い距離でも、若い女性が歩いてたら、何人ものスカウトに声をかけられるんですよ。「仕事探してない?」「LINE交換するだけで1000円あげるよ」って。その1000円が欲しい人がいるんですよ。その1000円があれば生理用品が買えるとか、その1000円があれば 2日間ご飯食べれるとか。でもそこで交換したら、その後ずっと「困ってない?」「いい仕事あるよ」ってLINEが来るんです。「最初は軽めのものからできるからさ」とか言われて。でも面接に行ったら「ああ、ちょっとうち今エアコン壊れちゃってて営業できないから、こっちの店だったらあるよ」などと言われて、性風俗店に誘導されることもよくあります。

そういうことが身近に溢れているのに、そのことがあまりにも知られてません。男たちの中で「女を買う」ことがありふれたものになり過ぎていて、女性たちがその実態に気付けないようにさせられているとも思います。

業者は、いろんな手口で女性が断れないように仕向けてきます。女性を性売買に誘導していくその構造に、私たちと一緒に街を歩くと気づけるんです。ぜひ「街歩きスタディーツアー」に多くの方にご参加いただきたいです。

「人権」を語ることを過激と呼ぶ世界で、本音を持ち寄るために

前田:医者の世界って右寄りの人が非常に多いんですよ。だから日本女医会みたいな政治とも太いパイプを持っていない、批判するような立場でいる人は珍しい。そうではない人の方が多くて、左っぽいことに関してはむしろ批判的な人はよくいます。

仁藤:女性の人権は「左っぽい」でしょうか。

前田:女医会としては、もちろん弱い立場にある方々と共にありたいんです。だってね、患者さんだって弱い立場なわけですよ。「お互いに意見を言い合って……」とか言うけど、そうは言っても私たちは治療する立場であって、患者さんは治療を受ける立場なわけだから。平等って言ったって、やっぱり立場的には上下関係が絶対生じてしまうわけじゃないですか。だから弱い立場の人、子どもや女性や障がいを持っている患者さんも「同じ人権を持ってるんだよ」っていうことを、広く分かってもらうためにはどうしたらいいか考えていきたいんです。でもそれを一生懸命やろうとすると、左だって言われちゃうんですよね。

女医会では今、女性や高齢者の健康支援やジェンダー平等に対する活動をしています。いろいろ取り組んではいるんだけど、やり過ぎるとそれに対する批判も強くなるので、いろいろ気を遣います。

仁藤:その中でよく今回の対談に出てくださったなと思います。日本女医会に集まる女性たちは、女性の人権や対等な関係性の広がりを大切にしたいと考えている女性たちなんですか。

前田:そういう人たちもいるし、そうじゃない人もいるけど、いろんな活動の中で思うことは近いことが多いです。必ずしもみんなが同じ方向を向いてるとは言わないけれども、例えば高齢者の「健康の支援をしたい」っていうことに関しては反対する人がいない。それから、「ジェンダー平等であるべきだ」っていうことには、反対する人はいないわけですね。その中のテイストをどうしていくかは、ちょっと工夫が必要かなと思いますけどね。

仁藤:「女性の人権」を口にすると「過激だ」っていう人もいる中で、孤独を感じる人も多いと思うのですが、前田さんはどうお考えですか。

前田:みんなが同じであることのほうが少ないですよね。例えば私は泌尿器科医ですが、泌尿器科の学会の中でみんなが私と同じような意見かといったら、そんな人はあんまりいないと思うんです。反対に、例えば夢乃さんもそうだし、「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」など、全然違う世界の人たちでも同じこと同じ気持ちで活動している人はいるから。

仁藤:Colaboとつながる女性たち、少女たちだけでなく、支援者の方たちも「Colaboだから安心して話せる」「職場では全然言えない」っていう人はすごく多いんです。そういう思いを持ってる人はたくさんいるはずなので、そういう人たちが女性人権センターに集って一緒に怒ったり、お互いに支えて、社会を変えていく力になるといいなって思ってます。 

前田:声を上げたいと思ってても「どうしていいかわからない」って人はたくさんいると思うし、「どこでつながれるかわからない」っていう人もたくさんいると思うんですよ。普段はそんな話をしないけど、実は同じ仕事をしてる中にも同じ気持ちを持ってる人がいるかもしれない。

全然知らないとこで突然「こういう活動しませんか?」って言われたら、「えー!」って思っちゃうかもしれないけど、女性人権センターみたいな場所にみんなが気軽に集まれたら「私もやりたい」っていう人が出て来ると思うんです。

仁藤:そんな場にしたいなと思うし、そこに前田さんのように医師の立場から関わってくれる人がいること、立場や見てみたもの、経験が違う人たちが痛みを分かち合い、社会を変えるための連帯が生まれる場所にしたいです。女性人権センター建設に向けて、これからもよろしくお願いします。

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