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女性人権センター

対談|第8回(前編)島岡まな×仁藤夢乃「日本で評価される『女らしさ』が通用しないフランスから見る性差別」ーなぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、Colabo代表の仁藤が女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」のメンバーと対談し、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

第八回目のゲストは、島岡まなさんです。
島岡まなさんは、ジェンダー刑法学やフランス刑法を研究している刑法学者であり、大阪大学大学院法学研究科の教授も務められています。2022年には大阪大学ダイバーシティ& インクルージョンセンターのセンター長に就任され、 2025年の3月まで務められました。 女性研究者の環境の改善などに取り組まれています。2025年6月に『ジェンダーレンズで見る刑事法』を出版されました。

支援団体に対する懐疑と当事者運動

仁藤:島岡さんはフランスでも研究されていますが、日本の少女たちが置かれている現状は、フランスと比べてもかなり厳しいように感じています。島岡さんから見て、Colaboの活動はどのように映っていますか?

島岡: Colaboは、「すべての少女が衣食住と関係性を持ち、困難を抱える少女が搾取や暴力にいきつかなくてよい社会」を目指して、中高生を中心とする10代女性を支える活動をしているというふうに、対象と目的を明確にしている点に、非常に特色があると思っています。従来からあった警察による補導や、自治体等による一般的な青少年の保護とは全然違うと思っています。

10代女性の抱える特有の問題に目を向けて、彼女たちに寄り添って、彼女たちが本当に必要としているものを、物心両面から支えているという点が非常に素晴らしい。私が一番感銘を受けたのは、 仁藤さんがいろんなところで書かれている、「私たちは支援者団体と思われていますが、私たちの活動は当事者運動であると考えています」という言葉です。私は、昔、支援団体自体に懐疑的になっていた時期があるんですよ。どうしても支援団体っていうと、支援する側とされる側っていうふうに強者と弱者の関係が必ずできてしまって、そこに権力勾配が生じると思うんですね。その権力構造がとても嫌で、本当にこの人たち全員善意でやってるんだろうか、本当に純粋な気持ちなんだろうか、それとも自分が弱い人を助けてあげるっていう立場に立ちたい人たちがやっているんじゃないかと。

仁藤: そういう人もいますからね。

島岡: それがすごく嫌で、支援団体ってどうかなって思っていた時期があったんですけど、Colaboはその疑念を見事に払拭してくれる。「ああこれ、私が求めていたことだ」と思いました。「支援する・される関係でなく、共に考え、行動する」というように明確に述べられているので、これは当事者ならではの視点かなと思っています。

仁藤:今、新宿・歌舞伎町では大久保公園、大阪でもグリ下などで警察が子どもの補導や女性の取り締まりという形でパトロールを強化しています。民間団体も、もともとはColaboが少女たちとつながるためのアウトリーチとして活動していたことを「パトロール」と呼ぶ団体も増えてきました。子どもたちと関係をつくることよりも、街を巡回してその子たちを見るという視点が全然違うなと感じます。少女たちは支配構造の中で弱い立場に置かれて暴力の被害に遭っているのに、大人たちが責任を果たしていない。そして、少女たちを権利の主体として捉えてもいないんです。研究の世界も「先生、先生」と呼ばれることを喜ぶ人も多いなかで、対等な関係性を大事にしていることに共感していただいて、嬉しいです。

島岡:私は刑法学者で、性暴力や性犯罪の問題をライフワークとしてずっとやってきて、2023年に刑法改正されるまで20年ぐらい活動してきました。改正されて少しは良くなった点もあるんですけれども、実際、社会にはまだまだ性搾取や性の商品化、性暴力が蔓延していると思うんですよね。特に若い女性が被害に遭っている状況が日本では強いと思うので、10代女性に特化して一緒に活動していくColaboの活動は本当に貴重であると思っています。

若さや幼さを性的消費の対象とする日本社会

仁藤:日本では特に、若さや幼さに性的な魅力や価値があるという価値観を男たちが植え付けていますよね。

島岡:それは世界的に見て、非情に珍しいです。

仁藤:少女たちもそれを内面化しているので、私自身も、14、5歳の頃から自分が性的に見られることは自分の価値なんだって思い込まされて、 そういう振る舞いをさせられていたと思います。刑法改正(2023年、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられた)の過程でも、議員も含めた男社会からの反発がありましたよね。野党の議員が、「50代の僕が14歳の子と恋愛をしたらダメなのか」みたいなことを言ったり、対等な関係性や性的な同意がどのようなものなのか、少女と性行為をするということがどういうことなのかが全く理解されていなかった。これって、世界的に見ても日本はどういう状況なのでしょうか。

島岡:少なくともヨーロッパではロリコン趣味は一般的にはないと思います。フランスでは、男性は「女性の魅力は40代から」ってみんな公言するような社会です。

仁藤:日本社会にいたら、そういうふうに思えないですよね。若い時は、私も「25を超えたらおばさんで、人生おしまい」ぐらいに思わされてた。

島岡: それ私の時から変わってないじゃないですか。

仁藤:島岡さんの時代も? 

島岡:そう。25歳を超えたら売れ残りだから、「クリスマスケーキ」だって。

仁藤:今は少女たちが「25になったら終わりだ」と言っているから、まずは「25歳以降、めちゃくちゃ楽しいよ。メンタルも安定してきたり、ある程度自分で生活できるようになっていったり、自分の力を感じられるようになったりしていくのがその時代だから」と伝えています。かつての私自身、そして今の少女たちも「今が一番いい時」と思い込まされているけど、「40代からだ」って言われたら希望になりますよね。

少女たちが性的に消費されることについて、日本社会だと違和感を持ってる人がすごく少ないですよね。私が中学校や高校で授業をすると、子どもたちのなかにも児童ポルノを見て楽しむということが広がっていて、少年たちからも15、6歳の時点で「僕の好きなものを否定された」とか「いいじゃないか」というような反応がある。日本にいると、そういうポスターもたくさん街なかにあるので、麻痺してしまう。フランスではそういうポスターとかはないんですか?

島岡:ないです。日本のアニメのように、胸だけ大きい若い女の子がフランスで人気という話は聞いたことがないです。

仁藤:海外に行ったときに、少年たちから「やめて」と声をかけられたことがあって、それに対して支援団体の人がすごく怒って「やめなさい」と言っていたんです。何かと思ったら、日本のAVや、少女をレイプするようなアニメを若い人たちがネットで見ていると。それで、日本人の女性を見ると性的な対象として笑うということだったんです。日本の状況が世界にも悪影響を与えていることを実感しています。

法律が変わることで、市民の意識が変わる

仁藤:島岡さんは、日本の女性差別の現状についてどのように捉えていますか?

島岡: 世界経済フォーラムが毎年出している、グローバルジェンダーギャップ指数の2025年版で日本は148カ国中118位だったんですよね。下から数えた方が早いのに、これに対して日本人が危機感を持たないことが私は不思議でならない。2006年から始まって、20年間ずっとG7の中で最下位のままだし、アジアの中でも低い。そのようにデータが出ていますから、客観的に、国際的に見ても男女格差が大きい。それは女性差別が深刻だということなんです。

それから、私は刑法学者なので、犯罪統計。「日本は性犯罪が少ない」っていう人が多いですけど、それって処罰されていないっていうことなんですよね。野放しにされている。欧米だったら処罰されるようなことが日本では性犯罪規定になってなかったし、不同意レイプ罪もなかったので、強い暴行などがなければ全部不起訴になってしまっていた。だから統計に出ないのであって、その証拠に2023年の刑法改正後には性犯罪数が伸びているんですよ。これから日本も厳しく処罰するようになれば、増えてくると思っています。

仁藤: 刑法が変わることで、市民の意識も変わると思いますか? 

島岡: 変わると思います。私はそれを目指してやってきたんです。20年くらい前にジェンダー法学会ができて、弁護士さんたちと交流するようになり「日本はひどい」と。これだけ私たちが支援しても裁判官が聞いてくれないとか、そう話していたんです。そこで私は、法律が変わらなければ、いくら弁護士や被害者支援団体の人たちが頑張っても市民の意識は変わらないんじゃないか、法律や制度を変えることも必要だと思って。私は外に出るのが得意でないから、研究室にこもっているかもしれないけれど、法律を変えるために論文を書いたり、国際的な動きを調べたりして発信しようって思いました。

仁藤: 刑法改正を通して今、日本の性犯罪に関する法律は、世界に近づいたのでしょうか。

島岡:画期的に近づいたと思います。23年に改正されてから何回かフランスで講演したんですけれども、みんな驚いて、「もう日本はフランスを抜かしましたね」っていうくらい、不同意性交等罪が評価されています。

仁藤:当事者や支援団体、弁護士や政治家、研究者も一緒になって問題意識を高めていったからこそですよね。フランスでは買春者処罰もあるんですよね。

島岡:あります。それもすごく議論を巻き起こしたんですよね。反対が相当強くて、人権宣言の国なので、人々の自由もすごく重視する国なんです。「売買春というのは、買いたい人がいて売りたい人もいるんだから」という声がとても強かったんです。それでも、被害者支援団体や女性の声もとても強い。国会議員の女性の割合は40%くらいですし、閣僚は10年前からずっと男女半々で、人権意識が高い人が多いので、「やっぱり買う側が悪いだろう」という世論がだんだん盛り上がって、2016年に改正されました。

仁藤:お金で女性を買うこと、性行為を買うことというのは一番簡単な支配の方法であるはずなのに、なぜかそれが資本主義社会の中では「対等だろう」と勘違いさせる言説が、日本でも広がっていますね。フランスで買春者処罰の導入に関わった元国会議員の方とお話した時に、日本での導入に向けてどうしたらいいかと質問したら、日本の国会議員の女性割合を聞かれたんですね。私は、良くなってきたという意味で「一割」と答えたら、ポカーンとしていました。ショックを受けたような顔で。そういうところも一つひとつ変えていかなければなりませんね。

フランス留学で受けたカルチャーショックと出産

仁藤:島岡さんご自身がこれまで経験されてきた女性差別や、フランスと日本を行き来されている中で感じていることはありますか?

島岡:日本にいた時は、実は私もジェンダーバイアスだらけでした。日本社会って生まれた時からジェンダーバイアスにまみれているじゃないですか。私は大学教授の父と専業主婦の母、5人の子どもがいて、母は父に絶対逆らわない、父は家事は一切しないみたいな家で育ったので「女の幸せは結婚よ」みたいな古い考えを大学くらいまで持っていたんです。

だから、「自分が差別された」というのはその時まではあまり感じなかったんですけど、フランスに行って本当にカルチャーショックを受けて、180度価値観が変わりました。日本で評価されている「女らしさ」が、向こうへ行ったら全然通用しなかったんです。当時私は30歳近かったんですが、年下の学生たちから「まなは何でそんな後ろに立っているんだ」とか「声が小さい」とか怒られるんですよ。「なんだそれは」「その態度は変だ」「それは格好悪い」と年下の男の子から言われるんです。35年前ですからね。対等というのはこういうことなんだなってよく分かって、それで全く違う自己主張をするようになりました。

仁藤:今、同席しているスタッフたちがこの話を聞いてすごくわかっているのはなぜかというと、Colaboで活動を始める若い女性たち、スタッフや少女たちも私から「声が小さい」「自分の意見をしっかり言いなさい」とか、めちゃくちゃ言われているんです。活動に参加する女性たちは、性搾取や女性差別に対して「おかしい」と思っているのに、ニコニコして座っていたりとかして。「その笑顔いらないから、ちゃんと自分の考えを言って」と。

島岡:愛想の良い子が人気っていうふうに刷り込まれちゃっていますよね。

仁藤:だから私にそう言われた少女たちは、困っちゃうというか。そんなことを言われたことがないからどうしたらいいかわからないし、自分がどういうふうに、何を考えて、どんな意見を持っている人間かということを考えたことがなかったりするから、すごく戸惑う。
でも、彼女たちと同じくらいの時に、島岡さんもそうだったんだと聞けると、「うちらもまだ大丈夫じゃん」って。
島岡:そう。人間は変われます!

仁藤:島岡さんは、そこからどのようにして変わっていったんですか?

島岡:その当時から、フランスでは、可愛いだけの女の子なんてダメだって突きつけられたんですよね。なので自分も変わろうと思って、努力して変わってきたんです。フランスでは当時、今から30年以上前から既に専業主婦が存在していなくて、女性はみんな働いていたので、それがショックでした。日本に帰ってきて、公園を通ったらみんなブラブラと、女の人たちが子どもを連れているのがもったいないって思ったんですね。この人たちの力を生かしてないんだ、だから日本はダメなんだって思いました。

仁藤:日本だと、女性が子育てしながら働くというのは、生活の余裕がないから短時間でも労働力として働くということが多く、「女性活躍」などと言いながら女性は非正規労働で搾取される現状がありますが、フランスでは当時から、女性もバリバリ働いていたんですか?

島岡:そうです。労働者の人権がものすごく守られているので。子どもを預けられる環境も整っているし、ベビーシッター代なども補助してくれますし、支援がものすごくあります。

仁藤:「家のこともやりながら仕事もなんて」とならない状況を政府や社会がつくっている?

島岡:1970年代から、つまり第2波フェミニズムの頃から始まっていて、当時、中絶の自由化もされましたし、50年も前にそういう社会が出来上がっていたから、人々の意識も違うんだと思います。

仁藤:そういう状況が日本にもあれば、女性たちが、自分がやりたいことをやりながら、 家庭を持つこともできると思うんですけど、そういう状況がないから、女性たちにやりたいことがあっても、子どもができたから諦めざるを得ないということが多いですよね。

島岡:ぜひ聞いていただきたいのは、私、実はできちゃった婚なんですよね。ずっとピルを飲んでいたんですけど、帰国する時にちょうど切れちゃったんですよ。日本では当時1万2000円ぐらいでしたけど、フランスではピルが普及していて当時から300円ぐらいで1か月分買えたので。

仁藤:300円ですか!? 

島岡:そうです。それで日本に帰国する時にちょうど切れちゃって、買おうか迷って、でもあと数日だからいいやと思っていたら、妊娠してしまいました。帰国後、妊娠が発覚して指導教授にも隠して、「ちょっと勉強し忘れたことがあるので」とか言ってフランスにとんぼ返りしたんですよ。そして、そのことを彼に言ったら、「バンザーイ」とか言って、家族もすごく喜んでるんですよ。

「え、なんで? 私は未婚だし、お金もないし、学生だから」って言ったら、「それが何か?」ってみんなに言われました。産婦人科に行っても、「それが何か?」「Et alors?」って。私は日本では親戚にも隠しているし、指導教授にも隠しているのに、この違いは何?って思ったら、学生や無収入者には、検診から、出産も入院費用も全部、私は一切請求されなかったんです。しかも、妊娠6ヶ月から当時のお金で毎月7、8万の手当てがもらえたんです。今のお金だったら20万円くらい。私は留学生だから税金を払っていないのに、その扱い。それを全部、国家予算でやっているから人口が増えるんですよ。ヨーロッパでもフランスは、特殊合計出生率が非常に高いんです。

仁藤:それで、フランスに残って出産されたのですか?

島岡:そうです。もちろん極秘出産なんですけど、日本では明かさなかったんですね。当時、子持ちの無職者には一切、刑法のポストなんて大学になかったんです。大学にも就職するまでは隠して仕事を探して、就職が決まって契約書にサインした途端、「実は私、結婚をしてまして、子どもが2歳なんです」と言うと、みんなびっくりしてしまった。そういう時代でした。

仁藤:日本だと、今も妊娠した時に「やばい」「誰にも言えない」となる女性はすごく多くて、Colaboにも妊娠の相談がたくさんあります。親や学校に言えないで、病院にも行けないまま自分が今何週なのか、いつまで中絶できるのかもわからなかったり、15万円ほどの中絶費用が用意できなくてどうしようとなっていたり、臨月まで誰にも相談できずに出産した高校生もいます。婦人科で妊娠したことを怒られた経験のある若年女性もいます。日本では、妊娠が悪いことのように扱われて、すごく大変な目に遭うし、お金もかかるし、学校にばれたら学校も辞めされるかもしれないみたいな、罰みたいですよね。

島岡:それとはもう全然違います。みんなお祝いしてくれました。「おめでとう!」みたいな。私の方がびっくりしちゃって。

仁藤:それだけのサポートが当然である社会なら、人に話すこともできる。その上で産むのか産まないのか、産んでも自分で面倒が見られない場合は、誰かに預けるということも当たり前の選択としてある。

島岡:そうです。妊娠したとき、フランスで「おめでとう、でもあなたの自由よ」って言われたんですね。「産むか産まないかはあなたが決めることだから、配偶者とかパートナーの同意も要りませんよ。あなただけが決めることですからね」って。30年以上前ですよ、言われたの。しかも中絶も、錠剤1錠でできたんです。

仁藤:日本は今でも、お腹の中の子どもの父親の同意を求められますし、母体に負担の大きい方法での手術が主な中絶方法とされています。全然違うんですね。

幼少期からの性教育、ジェンダー平等教育

島岡:ジェンダー意識が浸透している社会で過ごして、本当に私は解放されたんですよね。日本に特有の「女性は痩せていて、綺麗じゃなきゃいけない」とか、そういう価値観が全然ないので。当時すでにフランスでは、女性は自由で、海岸でのトップレスは当たり前だし、ノーブラの人もたくさんいました。それでも誰もいやらしい目で見ない。30年以上前からですよ。そういう自由なところで10代も伸び伸び育っているから、抑圧されることがないし、 自分の好きなように生きることができると思います。

性の解放も進んでいて、結婚して親戚の家に行ったら、高校生の娘の彼氏が遊びに来ていて「今日泊まるのよね」って言って、二人で部屋に入っていったんです。私はドギマギしてしまって、「何これ?」って思ったんだけど、それくらい嘘がないんです。日本みたいに厳しくすればするほど、「友達の家に泊まる」とか嘘をつくようになる。そうじゃなくて、若い子でも堂々と家に泊まって、好き同士なら、避妊さえきちんとしていればいいという、大人の社会なんですね。日本は大人が子どもなんだなと、その時に気が付いて。大人たちが世間の目を気にしないで、自分たちが自己肯定感を高めれば子どもを褒めて育てられるのになと感じたんです。

仁藤:子どもたちは性教育を小さいころから受けている?

島岡:そうです。6歳くらいから。

仁藤:日本だと、性のことを教えなかったり、タブー視していますよね。知識がないと、フランスの子どもたちみたいに自立的な選択はできないけど、親もその知識は当然持っているということなんですか?

島岡:そうです。50年前にそう変わっていたわけだから。なので、性搾取や「援助交際」などもフランスでは聞いたこともなかったし、ラブホテルも全然ない。家でできるので。厳しくしているようで、性が乱れに乱れている日本の状況は、本末転倒だなって。

裁判官の70%以上が女性のフランスと日本の入試制度の違い

島岡:それと、日本では入試制度などの制度自体が女性にとって不利にできていることに気が付きました。なぜかというと、日本だと中国の華僑の時代みたいな、何百年も前のような入試を今でもやってるじゃないですか。一日とか二日かけて、朝から晩まで缶詰で一分一秒を争う、体力勝負なんですね。これって女性にとってはどうしても不利なんですよ。アスリートたちがオリンピックで男女一緒に競技しているようなものじゃないですか。

女性の割合がどうしても伸びない司法試験もそうなんですけど、生理などの女性に特有の問題が拡張しちゃうような制度になっている。フランスだと、入試も司法試験も数ヶ月かけてやるんです。ちゃんとバランスがとれていて、男女で不利にならない。そうしてみたら、2016年の大学進学率が、女性が71%、男子58%なんですよ。

司法試験に至っては、フランスでは裁判官の71%が女性、検察官と弁護士も60%以上が女性で、全部女性が多いんですね。日本は今でも裁判官でさえ28%、検察官が25%、弁護士に至っては約19%で、2割にいってない。それは、制度さえしっかりすれば、女性の方が実は優秀なんだっていうことをフランスが証明しているんです。意識を変えることは必要だけど、制度や法律自体を変えていくっていうことが本当に必要だなと思っています。 

仁藤:私もこの3年間、Colaboに対する攻撃やデマに関する裁判を、人生で初めてやっていて、20個以上の裁判で全て勝訴しているんですが、裁判官の反応も男女で全然違うと思います。女性が裁判長の判決文には人間味があって、実感を持って書いてくれているなとか、怒っているなということが伝わってくる。男性裁判官には、あまりこの深刻さが伝わってないと感じることも多いです。

島岡:そうです。性犯罪の裁判でも全く同じです。 

仁藤:私がはっきり意思を持っているだけで強そうに見えたり、「裁判官にとっても可愛げがないのよ」と弁護士さんに言われたこともあって。フランスでは、私なんか「強い女」というふうに思われないと思いますけど、日本だと「すごく強くてモノを言う女」みたいに思われていて。裁判でも、メソメソ泣いて、辛いです、苦しいです、助けてくださいとか言えば、もっと良かったかもしれない。検察官とか警察官の対応も変わるかもしれない。実際に警察署で女性が被害を訴えるときも被害届を受理してもらえなくて、泣けば早いみたいなこともあるんです。そういうことも、女性警官や裁判官などが増えてくればなくなり、対等な人間として話ができるんだろうなと思います。 

仁藤:制度を変えるためには、国会議員の女性率が高くないといけませんが、フランスでは女性の国会議員の数が増えるまでにどのような道のりがあったんですか?

島岡:フランスでは2000年にパリテ法と呼ばれる、候補者男女同数法ができたんです。それが、女性を優遇していることになり、法の下の平等に反するのではないかという議論が日本であるんですが、フランスでは、それが実現しないほうがおかしいとして憲法を改正しているんです。憲法に、政治へのアクセスは半々にすべきだと書きこんで法律ができているんです。当時はヨーロッパのなかでも女性の国会議員が少ない国だったけど、今は40%を前後している。それでもまだ半々ではないとみんな怒っています。

仁藤:選挙の制度としても、女性が候補者として活動しやすい仕組みがあるのでしょうか。

島岡:日本とはそれも全然違います。まず、供託金がない。日本は選挙に出るために数百万円必要ですが、フランスでは数千円なので、誰でもできる。地方議会は男女一組で立候補するため必ず二人で当選するので、男女半々になるんです。二人一組で投票しなきゃいけないから。

仁藤:そうなれば、男性もジェンダー視点をもった政策を訴えないと女性の票が得られなくなってきますもんね。

(後編)「女性の勇気がジェンダー不平等社会を変える」に続く

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