コラム

女性人権センター

対談|第8回(後編)島岡まな×仁藤夢乃「女性の勇気がジェンダー不平等社会を変える」―なぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、趣旨に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

(前編)「日本で評価される『女らしさ』が通用しないフランスから見る性差別」はこちら 

日本で育つと内面化されるミソジニー

仁藤:島岡さんは、フランスでの子育ても経験されましたが、そこで感じた日本との違いはありますか?

島岡:離婚して、娘は父親が引き取ってフランスで育ち、息子だけ4歳から8歳までフランスで過ごしていたんですけど、8歳の時に日本に引き取ったんですよね。娘が16歳頃に日本に来て、「日本のテレビなんて見てられない」って怒りだしたんです。たった16歳ですよ。「こんな女性差別的な番組ばっかりで、CMでもお母さんがエプロンしているようなものがあったり、バラエティで女性がバカなふりして笑ってて、みんなでバカだバカだって言っているじゃないか、こんなのはフランスでは許されない」って言い出したんですよね。

一方で日本で過ごしていた息子は当時高校生で、全然それに気が付かなくて。息子はミニスカートの可愛いだけのアイドルが大好きで、「おかしいじゃない」と娘と私が言っても全然聞く耳を持たなくなってしまっていたんです。息子は8歳まではフランスで育って、日本に来たばかりの頃は、人権意識が高くて「野球チームでお母さんがお茶注いでいるのはおかしい」とか、私でも気が付かないことを言うようになっていたのに。日本でほったらかしにしていたら、 自然とそういうジェンダーバイアスを身につけて、すごくマッチョになっちゃっていたんですよね。

子育てで偶然実験してしまったというか、社会が人間を作るんだっていうことをその時痛感したんです。二人とも同じ私の子なのに、こんなに180度変わってしまうんだなって本当に思いました。

仁藤:お子さんたちは私と同世代なのかなと思うんですが、私も高校生ぐらいの頃は、 AKBのようなアイドルが流行って、それを少年たちが「誰がいい?」って選んだり、女の子たちのバストサイズとかウエストが何センチとか、細くていいとか、おとなしそうでいいとか、そういうことで評価するっていうのが当たり前になっていました。

島岡: 悪いことだとは思わないよね。

仁藤:性売買の現場では、女性たちが物として性的に切り取られて商品化されてきたことが、日本では、少年を含めて多くの人たちに当たり前のように広がってしまいましたよね。今では学校の先生たちも「○○ちゃんがいい」「自分は○○推し」などといって、人を選ぶ、見た目などで評価する立場に立てる、という価値観を広げています。

息子さんはその後、どうなったんですか?

島岡:私は、息子を高2の時にもう一回フランスに転校させたんです。最初は文句を言ってたんですけど、だんだん慣れて、「日本の状況はとにかくひどい」と言うようになりましたね。

仁藤:内面化されたミソジニーは?

島岡:とれたと思います。

仁藤:同じ少年だった子が、フランスにいればジェンダー意識があって、人権意識が持てるのに、日本に来たらそれがなくなって、また戻ったら変わった。

島岡:社会の影響ってほんとに大きいなと。教育とメディアですよね。

仁藤:今、人権問題に関心がある人は、日本では息苦しすぎて、海外に行ってそのまま帰ってこないことがすごく多いです。この息苦しい社会を変えるには、私たちに内面化されたもの、当たり前に思わされていることを一つ一つ変えていかないといけないですね。

女性が声をあげることでジェンダー平等に近づいた

仁藤:今の日本社会は、女性はまだまだ声を上げにくく、声をあげる女性に対する攻撃も強まっています。このような日本の現状を、どう見られていますか?

島岡:それはミソジニー、女性差別の表れなので、決して許してはいけないと思っています。日本では、フランスのように刑法に差別罪や、包括的反差別法がない。国から独立した人権機関もないので、まずそれらを整備して厳正に処罰することが必要だと思います。

他方で、人権が守られていないという点では、男性も女性も同じなんじゃないかと思うんですよ。攻撃する側の男性にも問題があって、彼らは問題を抱えている。この人権が守られない日本社会の中で、多くの抑圧にさらされているから、その欲求不満のはけ口として、もっと弱い女性を差別するんだろうなと思います。処罰も必要だけど、一方で支援も必要じゃないかなと思っています。実際、北欧のスウェーデンなど、ジェンダー平等が進んでいる国では、何十年も前に「男性相談センター」って作っているんですよね。男性が抱える悩みをちゃんと支援して、女性に攻撃の刃が向かないようにしているので、 そういうのもあるといいなと思っています。

仁藤: 日本だと、Colaboの妨害の件でもそうですけど、男社会の中で弱者として扱われてきた男性たちが、女性の権利を主張する女性を攻撃しているとすごく実感しています。彼らの弱さって、自分の痛みや弱さを受け入れられないというところにあるんじゃないかと思っています。日本にも「男性相談センター」があったらいいなと思うんですけど、そういうところに彼らが自分の弱さを認めて相談に行けるんでしょうか。相談や支援の在り方も、日本だと対等な関係ではない現状があり、相談している自分を受け入れられないのではないかと思います。自身の弱さや被害を認識することへの抵抗感が、日本社会、特に男性たちの間で広く根付いてしまっていると強く感じます。

この点について、フランスの現状はどうなのでしょうか?

島岡:幼い時からの教育、人権教育や包括的性教育があれば人間は変われるので、「男は強くなきゃいけない」というバイアスもないですし、病気になったら病院行くのと同じように、何か問題を抱えていたらカウンセリングに行くのが普通な社会なので、誰も何も思わない。

仁藤:昔は「男は男らしく」という時代もありましたか? 

島岡:もちろん。

仁藤:でも、女性達が声を上げて変わっていった。

島岡:そうです。だってフランスも女性の参政権を獲得した時期は、日本と同じですからね。1960年代ぐらいまで女性は一人で銀行口座も開けなかったんですよ、あのフランスで。カトリックの強い国なので宗教の影響で女性は抑圧されていたんですけど、1970年代の第2波フェミニズムの時にみんな立ち上がれって言って、有名な映画女優が「私も中絶した。中絶が犯罪であるのはおかしい」と堂々と言って、300人くらいの有名人がそれに同意して、自分の名前を新聞に載せて公表したんですね。それで社会は変わっていったんですよ。女性の勇気が社会を変えてきた。日本ではそういうことは考えられない。子どもの時から、もっと勇気を持つように育てられていないから。

仁藤: 日本にいると「こんな社会を変えることなどできないのではないか」「そんな風に育ってきた男たちが変わるのは、もう手遅れなんじゃないか」と感じてしまう時もあるけど、そうやって女たちが勇気を持って、声をあげることで変えてきたんですね。日本は半世紀くらい遅れている状況なので、「女性人権センター」も、女たちで連帯して変えていく、そういう基盤になればいいなと改めて思います。

島岡:私もそのように思います。

仁藤:今、日本では声を上げようとするとすごく攻撃される現状があります。スラップ訴訟を起こされて裁判を闘うことになっても、女性弁護士が少ない。そんななかでも一緒に闘ってくれる人たちがいるけれども、その人たちも、すごく孤独を抱えています。Colaboにつながる女性たちには、「職場や他の社会運動の中で自分の痛みや怒りを分かってくれる人がいない」という人が多くいます。Colaboに集うと、そうした想いがわーっと溢れるように話される方がたくさんいるんですよね。そうやって女性たちがつながって、自分の痛みや怒りを言葉にして、「自分たちには社会を変えていく力があるんだ」って思って、声を上げる。その基盤として「女性人権センター」を建設したいです。

街なかに、気軽に行ける「女性人権センター」を

仁藤:「女性人権センター」に期待することはありますか?

島岡:大いにあります。Colaboも経験したように、攻撃や誹謗中傷を受けて、活動の場を移動せざるを得なくなることがあると思うんですけど、「女性人権センター」という拠点が、しっかりと安定した場で、安心して活動できる場になったら、その活動も何倍もパワーアップしてできるんじゃないかと、すごく期待しています。

仁藤:フランスのような人権救済センターも日本にはない中で、そういう役割も担っていけたらいいなと思います。海外では女たちが集まって、人権のことを考えることができるような場はたくさんあるんですか?

島岡:たくさんあります。アソシエーションっていうんですけど、フランスではもう街の中に何か所もあって、誰でも気軽に利用できます。

仁藤:街の中に!

島岡:30年以上前に、私が留学した時からありました。そういう活動に政府がものすごい予算をつけているんですよね。日本もそういう風になればいいなと思っています。

仁藤:まず私たちが新宿に「女性人権センター」を作ることで、そこから地方も含めて、町なかにそういう場所がある社会にしていきたいと思います。繁華街には、新宿や大阪、地方都市でも、性売買をいくらでも斡旋する「無料案内所」が街なかにたくさんあるんです。歌舞伎町では一軒あったら、その5メートル先にもう一軒、というくらい密集している。そこにいけば男性たちはあらゆる女性を買うことができる。少女も中高年の女性も、生理中の女性も、母乳も妊婦も売っている。障害のある女性を集めた風俗店もあって、「どんな女の人をお探しですか」「どこまでしたいですか?」と聞かれる。女性を性搾取するセンターなんです。

それと同じくらいの数、女性が相談できる場所があったり、それらがすべて、人権センターになれば、男性たちも女を買うことで支配欲を満たすことなく、男性も女性も、自分の人生をどう生きていきたいか考えて、自分の足で歩いていけるようになると思っています。「女性人権センター」の建設も、そういうきっかけにしていきたいです。

日本では、普通に街なかで「あの女がいいよね」と言ったり、性暴力の被害を訴えた人に対して「あいつと俺もやりたいな」とカフェで隣の席に座った男性たちが話していたりすることがある。フランスでは性売買に対する認識も日本とは違うということですが、日本では友達や同僚と買春に来たりしているんです。人権派を自称している弁護士が風俗店に司法修習生を連れていくことも普通にある。「どれにする?」といいながら女性を選び、女性を買った経験を共有することが、男社会の友情を深めることに役立っているんです。

島岡:フランスではそれはないですね。50年前はあったかもしれないけれど、それから教育も刑法も変わってきた。だから、カフェでそんな話をしていたら捕まるんです。

仁藤:捕まるんですか!?

島岡:セクハラ的侮辱罪っていうのがあって、犯罪なんです。

仁藤:それでいくと、日本の男性たちほぼ捕まっちゃう。

島岡:そうです。街なかで「お姉ちゃん」と女性に言っても捕まる。

仁藤:日本では、すごく言われますね「お姉ちゃん、お姉ちゃん」って。

島岡:そういうことも犯罪にしたんです。もともと差別罪もあるし、セクハラ罪もある。日本では、大臣が2018年に「日本にはセクハラ罪はない」とか言っていますが、フランスには1994年からあります。小さいときからそれは絶対にいけないことなんだと教育されて育っているから、そんなことは恥ずかしくて絶対に言えないです。そんなことを言ったら、よっぽど学がないと思われるので、学生になったら絶対に言わないですね。

仁藤:ほんとですか。「そんなことで捕まるんだ」と思ってしまう私も日本社会に染まっています。捕まるべきだと思うようにしていかなきゃいけない。他の国では女性たちが声をあげて変えてきたことを知ると、自分たちにも変えられるんだと思うことができます。「女性人権センター」でも海外の事例を学んだり、苦しい苦しいと言っているだけではなく、こういうふうに打開していけばいいんだということを女性たちと共有できる場にしたい。

島岡:こういうことを言うと、日本では処罰を強めて警察国家にするのか、とリベラルの人たちからも攻撃を受けるんですけど、フランスは日本以上に被疑者、被告人の人権が守られている国なんです。だからいくら犯罪を増やしても、警察にも弁護士が常駐していて、日本ほど冤罪もひどくない。性犯罪も広く処罰しているけど、被疑者の人権が守られているから、国家予算でサポートがあるんです。被疑者の段階から弁護士が無料で付けられる。死刑も80年代初頭に廃止している。

そういう国であれば、安心して処罰規定を作れる。犯罪者になっても守られるのだから、誰も反対しないんです。だから、日本がこうしたことに反対するのは、いかに人権が守られていないかという証拠なんです。

仁藤:最近も、新宿の警察署で、反抗した人の手を縛って動けないようにしたり乱暴したことが問題になっています。そういう社会だからこそ、このような意見が人権派からも出されるんだとわかりました。性犯罪の刑法が改正された後、人権派の弁護士や、弁護士を目指す人の学校で教えている人とかが「こんな刑法改正されちゃったら、誰でも性犯罪者になってしまう」「もう誰とも性行為できなくなっちゃうよね」と言っているんです。

島岡:そんなことない。それは自分たちの怠慢をすり替えて、弱い立場の被害者に押し付けていると思います。そういう弁護士たちには、弱い立場にある性犯罪被害者を叩くのではなく、国を叩きなさいと思います。被疑者、被告人の人権が守られない国の方を叩くべきなんです。それをせずに、いじめの構造と同じで、弁護士たちが、自分たちの弱さをもっと弱い人に押し付けていると思います。

仁藤:私たちが被害を訴えれば、加害者にも人権があると言われます。それはそうだけど、加害者の人権を守る話を被害者にするのではなくて、国にしてほしい。構造的な問題として何と闘うべきなのかを、私たちの社会は見失わされているんですね。

仁藤:今日はたくさんお話を聞かせていただきましたが、女性人権センターを通して、このような社会をどのように変えていけばいいのか、最後にメッセージをお願いします。

島岡:私もフランスに行って180度変わりましたし、人間は正しい教育、正しい知識を得られたら絶対に変わることができると思っています。フランス社会も、50年ほど前は遅れていたけれども、みんなの勇気で変わってきたじゃないですか。だから日本も絶望しないで、希望を持っていつも前向きに頑張れば、いつかはきっとヨーロッパのように、何十年先か分かりませんが、変わるんじゃないかな。「女性人権センター」ができたら、そのスピードも数倍アップして 10年後とかに変われるんじゃないかなと、とても期待しています。頑張ってください。

仁藤: 一緒に頑張りたいと思います。私たちがこのセンターを通してどんなことをやって、どんなふうに歩んでいけばいいのかが、今日お話ししてより明確になりました。女性たちが様々な立場から学んできたこと、経験してきたことや知見を持ち寄って、これからの社会を変えていこう、考えていこうって一緒に動き出す、そういう場所になったらいいなと思います。これを見てくれた皆さんにもその一員になってほしいし、一緒に参加してもらえたらうれしいです。

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