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女性人権センター

対談|第9回(前編)若林直子×仁藤夢乃「『あの時、こういう場所があれば』を実現するために」ーなぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、Colabo代表の仁藤が女性人権センター建設に賛同する「1000人委員会」のメンバーと対談し、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

第9回目のゲストは、若林直子さんです。
若林直子さんはPRコンサルタントで、社会課題の解決を目指す企業や団体の広報、ブランディングなどを行っています。ダイバーシティ&インクルーシブな社会を目指す「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」や、理不尽な校則をなくす「ブラック校則をなくそう!」プロジェクトを行っています。また、Colaboも支援していただいた、コロナ禍で困窮する人たちをサポートする「ひとりじゃないよプロジェクト」など、様々なプロジェクトに関わっておられます。

「Colaboがいれば……」と感じた理由

仁藤:若林さんはいろいろな支援団体とも交流があると思うのですが、Colaboの活動についてどのように見てくださっていますか?

若林:ちょっとディープな話から入っちゃうんですけど、私が小学校5年生の時の担任の教師がすごく変なヤバい人で、ベタベタしてきたり、私ともう一人の女の子の写真を頻繁に撮ってきたんです。

仁藤:男性?

若林:男性。本当にやばい教師ですよね。周りの男の子が、その先生と私の相合傘を作ったりしてからかってくることもありました。とても嫌だったけど、先生だし、言ったらまずいかなと思って、カメラが向くと逃げたりしていました。親にも心配をかけたくないし知られたくなくて心を閉ざしていて。

あるときクラスの男の子がその先生の家に行って、ビール瓶がいっぱい転がったベッドの下に私とその女の子の写真を見つけたんです。そういうのを聞いちゃってからは、写真を撮られるときに身構えるようになりました。「えっ、なんで一緒に写らないの?」って聞かれてもそんなこと説明できなくて。もう40年ぐらい経っているけれども、それぐらい経ってもすごくトラウマとして残っているし、その時に誰かに話せたら良かったなと今でも思うんです。

そんな時に、Colaboの存在があったらよかったなと。自分がこういう目に遭ったことを親にすら知られたくないと感じている中で、行政に相談するのはすごくハードルが高いし怖いイメージがある。Colaboを知った時にその思い出を最初に思い出して、そういう話を聞いてくれるんだと思い「ありがとう」っていう気持ちになりました。

仁藤:今かかわっている少女たちにも、親に心配をかけたくなくて被害に遭ってもずっと言えなかったという人がいます。大人になってからColaboを支えてくださる方の中にも、自分も被害にあったけど誰にも言えないまま大人になったという方も結構いらっしゃいます。そういう一つ一つの被害が、声を上げられないまま認識されずに無かったことにされたり、加害者たちがのうのうと教師を続けたりしている状況を変えていきたいなって。

若林:変えていきたいですね。中学の時も、男の先輩と仲良くしていたら女の先輩にいじめられて、先生に言ったんだけどなにもしてくれなくて。そうなると自分で自分の身を守るしかないから学校に行かなくなって、人に反発するようになったり、行くところもないから近くの海に一人でいたら補導されたりしました。

仁藤:若林さんも私たちと同じような経験をしているんですね。

若林:金髪にもしましたよ。自分で自分を守るしかないと思ったけど、たまたま親身になって相談にのってくれる先生がいて、その先生のおかげで国語の偏差値だけめっちゃ上がったこともありました。あの時にColaboみたいな存在があったらなって。

若林:「支援する、される」という言葉じゃない関係と言っているのがすごく良くて、言葉の使い方もそうだし、『私たちは「買われた」展』もそうだけど一つひとつにこだわりがある。

仁藤:気づいてくださっているんですね。

若林:それはすごく繊細になるじゃないですか。支援してくれると言っても、実際にはちょっとした言葉で自分の気持ちを閉ざしてしまうこともあるから。仁藤さんやColaboの本を拝読していて、言葉もすごく考えているんだと思って、ものすごく安心しました。Colaboに来る女の子たちもColaboの環境に安心しているんだろうなと思えて、本を読みながら泣きそうになっちゃった。

仁藤:少女たちを弱いものとして扱ったり、「助けてあげる対象」として扱う支援団体が多くあります。確かに大人たちが少女を守る部分ももちろんあるし、業者から守って闘う場面もたくさんあります。でもそれだけではない。「現状を変えるために声を上げていこう」という姿を見せる、その主体であることを少女たちにも感じてもらうことで、少女たち自身が主体的に自分の人生を歩いていけるようになります。

「日本の未来は男性だけでは考えられません」

仁藤:女性人権センターは、女性たちが痛みを分かち合い、少女たちも含めてこれからのことを考えたり、生活を変えていったりする力になる場にしたいと思っています。若林さんは女性人権センターの構想に賛同してくださって、一緒に寄付を呼びかける「1000人委員会」のメンバーになってくださいました。若林さんは今の女性差別の現状についてどう捉えていますか?

若林:私の周りは企業で働く方が多いのですが、企業の中でも「決定権があるのは男性でその下で働くのは女性」というところがまだまだあります。それをいうと、いわゆる意識の高い男性は「そんなところはもうないんじゃない?」「そういうのは古いですね」とおっしゃる。優位な立場にいる人ってやはり気づかないんですよね。

「ジェンダー平等は大事だよ」と言いながら、その人が企画したイベントでは登壇者全員が男性で「日本の未来を考える」みたいな内容になっている。私はネットパトロールをしてそういうのを見かけると、その人にメッセンジャーで「日本の未来は男性だけでは考えられません」と送ったりするんですけど、そういう意識を持っていない人はまだまだ多い。

あとは、この前知り合いからこんな相談を受けたんです。仕事があまりできない男性部長の下に、「〇〇さん(女性)みたいな優秀な方にサポートに就いてもらいたい。」って。その女性はとても優秀な方だから「それは彼女が上なんじゃない?」と言ったら「そっか……」みたいなお返事。そういう「男性が上で女性が下」というのはまだまだ根強いですね。みんな気がつかないでそれをやっている。少し前に勝間和代さんに言われて「確かに」と思ったのが、「お~いお茶」というペットボトル。あれって夫が妻に「おい、お茶」と言う感じがそのまま商品になっている。

仁藤:ひどいですよね。それを知るともう飲みたくなくなる。

若林:そうなんですよ。だから私、ちょっと飲めないなと思って。そういうのを一個一個見つけてやっていかないといけないなって。

仁藤:「お~いお茶」という名前が批判を浴びて変わる段階に、日本の社会が達していない。私も自分の家でも、父が母に対して「おーい、お茶」という感じでした。そういう家庭はまだたくさんあると思うし、男性たちも自分が差別を受ける側ではないから気づいていない。なかったことにしている。

若林:指摘すると「ああ、そっか」と言ってくださる方もいらっしゃいますよね。「男の人が悪い」と言い切ってしまうのもどうかな、と思うんです。小さい時から「男の子でしょ」と言われていたら、そうじゃなきゃいけないんだと思ってしまうから、根深いなと思う。

一方で希望に感じられるのは、最近若い方とお話ししていると「子育てを手伝う」「家事を手伝う」という言い方をする男性が少なくなってきている。だけどそれを年配の方に求めるのはかわいそうだなって思っちゃうところもあるんです。アップデートしてほしいとは思うけど、ずっとそうやって育ってきたから。

仁藤:そうやって育ってきた男性にも変わってほしいとは思っているけど、簡単ではないですよね。だからこそ、性差別に抗い対等な関係を社会の中で作っていくためにどうするかということを、若い世代と一緒に考えることも大切です。女性人権センターは、そういう基盤にできたらいいなと思います。

「嫌だ」と言う側も言われる側も抵抗をなくす人権教育の必要性

仁藤:若林さん自身がこれまでお仕事や活動をされていく中で経験されてきた女性差別についてもお話を伺いたいです。

若林:企業に勤めていると、経験されている人が多いような気がしますが、金融に勤めていた時に業界のバリバリやっていらっしゃるような方からセクハラを受けました。男の上司に相談したら「困ったこと聞いちゃったな」という反応をされて。そうするとこちらも「悪いことしたかな」と思ってしまうんですよね。そして結局、何にもしてくれませんでした。どちらかというとセクハラした人に寄っている感じ。男社会での協定みたいな感じで「女は我慢しろよ」的なのがすごくありました。

あとは、私が企画したプロジェクトが成功した時に、「〇〇君に花持たせてやってよ」と言われて、なぜかその男の子が社内賞を受賞して。その後にその部のトップから慰労で飲みに行こうと言われて、その人と二人で行ったら「その男子は今、子会社から出向していてこれから戻るから、やっぱり男の子だし花持たせてあげたかったんだよね」と言われて。「なんだよそれ」と思いました。しかもその男性の偉い人からは「いや、僕も愚痴を言う相手がいないからたまに付き合ってよ」みたいな感じに言われて。そんなくだらない話は多分いろいろな方が経験されていると思う。

仁藤:その当時はもう流すしかなかった?

若林:その時はちょっと強くなっていたから「嫌です。みんな行きましょう。」って冗談っぽく言ったけど。

仁藤:そうやって冗談っぽくかわすスキルも女性は上手くなっちゃっていますよね。

若林:そうですね。前に小島慶子さんがどこかのインタビューでおっしゃっていたけど、自分がアナウンサーとして入りたての頃は「そういうのをかわすスキルがあるのが素晴らしいんだよ」という風潮だったって。それは私もそうでしたね。「なんかおかしくない?」って思いながら。

仁藤:私も子どもの頃はそう思っていました。そうやって男性達の機嫌を損ねないようにしないと生き延びられなかったから、否応なくそれがうまくできる自分になっていったなと。

若林:仁藤さんは、東日本大震災の後、被災地支援で石巻に入られていたんですよね?私も宮城で被災地支援活動をしていた時に、一緒に同行したカメラマンから、くらい通りで車を脇に寄せられて襲いかかられたことが2回ぐらいあったんですよね。だから上司に「二人で行かせないでほしい」「団体のロゴが入った車の中でそういうことをされた」と言ったら「あの車じゃなかったらよかったの?ハハハ」とか言われて。

仁藤:最低。

若林:「最低」と思って、その上司には後から「謝ってください」と言って、謝ってもらいました。そういうのって本当に日々起こる。

仁藤:2次被害に遭っても、被害を受けた側が「謝ってください」って、勇気出して闘わないと分かってもらえない。

若林:作家の内澤旬子さんという方が、ストーカー規制法改正のために懸命に呼びかけをされています。彼女も何年か前にネットで知り合った男性からストーキングされたことがあるんです。そのときに、警察に行っても「実際に被害がないと」と言われて対処してもらえず、弁護士さんともうまくいかなくて。彼女が何回も引っ越しを余儀なくされたこと、ずっと恐怖を覚えながら生きていること、そういう目に被害者が遭うことを本当に変えたいです。

仁藤:いつも被害者が生活を変えなきゃいけない、隠れ続けなきゃいけないというのが今の日本の制度の在り方です。2025年にオーストラリアで開催された世界女性シェルター会議へ行った時に、あちらでは例えばDVから妻と子どもが逃げて保護されたら、夫も2日以内に自宅から出ていかなきゃいけないというルールがあると言っていました。日本もそういうルールが必要だなと思います。日本だと結局被害にあった人が逃げざるを得ず、加害者が家でぬくぬくしているという状況があるんです。

被災地支援や人権活動の現場で活動している人が性被害やセクハラ、女性差別に加担する問題は今も深刻です。多くの人がそれを言葉に出せないまま、「それを言うと大ごとになっちゃう」と思って、自分の被害を矮小化させられている。日本社会では、多くの人が同じような経験をしています。

“NO,GO,TELL”といって被害に遭いそうになった時にNoと言ったり、走って逃げたり、周りの人に伝えたりすることを子どもたちに教える、CAPプログラムというものがあります。私も10代の時に、暗い夜道を歩いていたら後ろから男に掴まれて顔と口を塞がれて、車に連れていかれそうになったことがあるんです。その時はたまたますごい声が出たので加害者がびっくりして逃げて行ったんですけど、声が出なかったら今どうなっていたか。

若林:私は被災地支援をしていた時にCAPプログラムを始めて知りました。その時に初めて「断わってもいいんだ」「周りの人に言ってもいいんだ」って自分自身も分かったんです。

CAPプログラムについて、知り合いの福祉の専門家が、ある教育家や自治体の首長さんにお話したことがあります。初めはピンと来ていなかった様子でしたが、それを「例えば〇〇さんが飲み会が嫌だと思った時には、嫌だと言う“権利”がある。嫌だと言われたら止めなきゃいけない。そういうことを小さい時から習っていたら、コミュニケーションがすごく楽になりませんか。」と言うと、その人たちも「確かにそうだね。」とおっしゃって。「じゃあ必要だね」って言ってくださいました。

子どもの時から「されたくない側」も「してしまった側」も、両方が人権意識を持っていたら変わるよなって思う。嫌だって言うことも言われることも抵抗がなくなるじゃないですか。だからこれを今、広めようと思って。

仁藤:「嫌です」って女性たちが言うような場面ってほとんど見たことないですよね。言えない環境、関係があるからで。それに、言われた側が「拒絶された」「自分を否定された」と思って憎しみを増大させちゃうのも問題です。言われた側がNOの意味が分かっていないし、慣れていないから人格否定だと捉えてしまったり。「お互いを尊重するとはどういうことか」「人権というのは何なのか」という基本的な教育を日本で暮らす私たちは受けてきていないんですよね。

若林:そういう時にどういう表現をしたらいいのかを教える教育は、すごく必要だなと思います。

仁藤:Colaboでも子どもたちにプライベートゾーンを絵本を使ったり日常のなかで教えていて、一緒にお泊まりに行くときはお風呂で体を自分で洗うように伝えたり、「誰かに触られたら言うんだよ」って小さい頃から伝えたりしていています。そうじゃないと、自分が受けた被害が何なのか分からないままになって、思春期に入ってから理解することもあるので。そういう人権教育や性教育を基本的なこととして広めていきたい。

若林:今ちょうどSRHR(性と生殖に関する健康と権利。Sexual and Reproductive Health and Rights)を全学校に広めようプロジェクトを頑張っているの。この前、大阪の田島南小学校で「生きる教育」というのをやっていて、まさに小学1年生がプライベートゾーンを学んだり、ゲーム形式で「この人とこの人は何が違いますか」「あの人がこういうことしました。どう思いますか?」と話し合ったりしています。そういうことをColaboでもやっているのは素敵ですね。

仁藤:そうした実践から学んで私たちももっとアップデートしていきたいです。

若林:子どもだけじゃなくて大人も学んでほしいし、私も学ばなきゃと思う。

*Sexual and Reproductive Health and Rights(性と生殖に関する健康と権利)……妊娠・出産・避妊・性感染症予防などの「性と生殖に関する健康」と、それを自分で決定できる「権利」を合わせた概念。特に女性や若者は、望まない妊娠、性感染症、性暴力などのリスクにさらされやすく、自分の身体や人生について選択できなければ健康・教育・経済的自立が脅かされるため、この考え方が必要とされています。国際的にもジェンダー平等や貧困対策と密接に結びつく重要課題として位置づけられています。

(後編)「次の世代に負の遺産を残さないために、大人である私たちが持つ責任」に続く

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