コラム

女性人権センター

対談|第6回(後編)角田由紀子×仁藤夢乃「仕組まれた分断を拒む『歌舞伎町の連帯の砦』」―なぜ今、女性人権センターが必要なのか

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Colaboでは今、「女性人権センター」建設を目指してご寄付の呼びかけをしています。
この対談では、趣旨に賛同する「1000人委員会」のメンバーとColabo代表の仁藤が、「なぜ今、女性人権センターが必要なのか」をテーマに、性差別の現状を見つめます。

第五回のゲスト、瀬戸大作さんとの対談の後編です。

(前編)「『知は力』知識を共有し差別に抗うために」はこちら 
(中編)「男社会の常識をひっくり返す『法廷での戦い』」はこちら

男社会では性売買が「女性の選択」とされている

仁藤:角田さんが、買春の問題は女性に対する性搾取だということに気づいて活動を始められたのはいつ頃だったんですか?

角田:何かきっかけというのはなかったと思うんだけども、はっきり意識したのはスウェーデンの買春処罰法のことを知った時かしらね。その前だって仁藤さんの話、それから韓国の人たちの、体験記を読んで、性売買の実態が性的虐待に過ぎないって感じていたけど。

仁藤:性売買を経験した韓国の当事者のポムナルさんの『道一つ越えたら崖っぷち』や、韓国で性売買防止法制定に尽力した活動家のシンパク・ジニョンさんの『性売買のブラックホール』では、そのことがよくわかりますよね。
(※シンパク・ジニョン氏、性売買経験当事者で相談員としても活動するムム氏をお招きし、性売買の構造的な搾取の問題解決に必要な法制度や、脱性売買支援について考えたシンポジウムについてはこちら

角田:なぜ女性がそういうところで働いているのかと考える時に、女性がそこでしか働けないという実態があるわけじゃないですか。そうすると、社会構造の中で女性が置かれている立場がわかってくる。ジェンダーギャップ指数でも、日本は経済分野も政治分野で順位がとても低い。そういう社会の中で生きていくために、最後には性を売るしかないという構造の問題なんです。

仁藤:性暴力の問題に取り組んでいる女性たちの中でも、性売買の現実が日本では全然知られていないし、すごく切り分けて考えられている。それをどうやって乗り越えていけばいいと思いますか?

角田:そうね、乗り越えるというか、現実を見れば誰もがわかるんじゃないの?一番強いのは事実の力なの、理屈じゃない。性売買の現場で何が起きているか、とりわけ女性がどういうことになっているかという現実を見てもらったら、それは女性に対する虐待という結論にしかならない。これは女性による選択でも何でもないの。選択というためには、対等な形で選択肢を示されたとき、「Aは嫌だけど、Bの方はいいわ」と選べる時に言えるのであって、Aしかなかったら選択もへったくれもない。

仁藤:男社会は女性たちの主体性をいつもは問題にしないのに、性売買についてだけ「自分で選んだんだろう」みたいなことを言って、「女性の選択」にすり替えている。女性たちに自己責任論を押し付けるのが、性売買の問題についてはずっと続いていますよね。

角田:それもおかしいって言わなくちゃね。なんでここに来て突然、女性に選択権が与えられるんだろうかって。それに選択肢が一つしかなくてやむを得ずやってるなら、それは選択と言わないの。日本語でも何語でも。

仁藤:私たちが出会う少女たち、大人になっても性売買を続けている女性たちも、「それしかなかった」とみんな言うんですよね。弁護士のなかでも「人権派」として有名な人たちが、「性売買も女性の選択だ」みたいなことを言っている。でも本当は、性売買がいかに女性に対する暴力であって、どんなにひどいことがそこで起きているかというのを、世の中はわかっている気がする。

弁護士になることができる女性たちや会社で働いている人たちは、ほとんどの人が身体を売ってない。よく楽して稼いでいるといわれるけど、そんなに楽だと思うならみんながやるはずなのにやらないじゃんって。やりたくないことだから、結局家がない子どもたち、親を頼れない人たち、借金を背負わされた女性たち、障がいがある女性たちがそこしかないと思い込まされて誘導されていく。その構造をちゃんと見ないで「女性の選択だ」と言いたがるのも男社会の手口だと私たちは思っていいます。そういうことを言ったり、性売買の現場で何が起きているのかということを語ったりするからColaboは攻撃されるんですね。

角田:そうよ、だって本当のことが段々バレてくるわけじゃない。そうすると、選択って言っていたのが成り立たなくなってくるんですよ。「なんでそんな性虐待を自分で選ぶ人がいるの?」ってみんな思うじゃないですか。実態がほとんど知られていないということが最も大きいと思うのね。そして、実態を知られてないということは、男が書いた幻想がいくらでも振りまかれるということなの。事実じゃなくて、都合よく女性が描かれている幻想がね。

仁藤:男の思う性売買女性の幻想を描いた本、多いですよね。女たちや少女たちが好きで身体を売るようになって、男を手玉に転がしているみたいなストーリー。

角田:それは、性売買で性虐待を受ける日々を送った人たちの、本当の話を聞かないからそうなるの。

「売る女」と「家庭の女」を分断する男社会の手口

角田:売春防止法は3条で売る方も買う方も禁止しているよね。でもすごく不思議なことに、処罰がないの。処罰がなかったら禁止しても禁止にならないって当たり前なのにね。この背景には、売る女性は絶対に処罰したいという当時の議員たちの思惑がある。

当時、社会党の女性国会議員がこう主張したの。「ああいう売春婦をほっておくと、私の夫はひっかかってしまう。どうしてくれるの。」って、そういう主婦の苦情が何十万とあったって。それで、女が処罰されないのはけしからんと。女性議員たちは、買った男が処罰されないのはけしからんとは言わなかった。

仁藤:そうやって女同士を「売る女」と「家庭の中の女」というふうに分けてきたのは男社会ですよね。女同士を闘わせるやり方は、今も私たちに対して男が仕向けてくるんですけど、その時代からずっとあったんですね。

角田:昔からあった。あなたの生まれる前からあった。

仁藤:若い女性から、「なんで女同士ってこんなに仲悪いの?」と言われることがあるんですよ。でもそうなってしまう理由を掘り下げると、実際には男社会の権力や基準があって、その中で女同士が戦わされているという構図がある。

角田:女が団結しないほうが、男にとって得でしょ。女が団結して、「性売買は絶対許さない」なんて言い出したら、それこそ買春者が困っちゃうわけ。そうならないように女同士を内輪もめさせておいて、自分たちの権利を守ろうとしているんじゃないの。

仁藤:だからなんですね。や若年女性支援事業が事業化されて、やっとColaboのような活動が広がっていく段階になった時に、性売買業者とつながるような人や「性売買は女性の権利」ということを主張する人がいろんな女性たちに声をかけて、「困っているのは若年女性だけじゃないんだ」っていうキャンペーンをかなりやりました。それで、「若年女性だけ優遇されているのは、国が子どもを産める女だけを大事にしたいからだ」「中高年だって困ってる」って運動言い始めたんです。

結局、厚労省の2025年度の予算要求から若年女性支援事業は消えて、官民協働事業というものに置き換えられました。性売買では、一番若くて何も知らない時が一番高く売れる。性売買業者はそこを狙うから、そういう問題に対応しようということでできた若年女性事業だったのに、そこに女たちの反発を産み出す男社会の構造によって、事業がなくなってしまったという現状です。

角田:間違った社会構造を維持する側に立ってしまう人は、女性の中にもいる。私が昔、離婚事件で出会った依頼者もそうだった。夫がフィリピンから来た女性に入れ上げて家を出て行っちゃった、だから許せないと言うのね。その夫はしょっちゅうフィリピンに遊びに行っていて、妻はどうしていたかというと「私はいい妻だったから、夫がフィリピン行く時には必ずスーツケースにコンドームを入れてあげた。それくらい私は気の利くいい妻だった。」と言うんです。だけど、次第に遊んでくるんじゃなくて、気に入った女の人を日本に呼んでくるようになり、要するに二人は恋愛関係になった。依頼者の女性は「私は、恋愛は許さない。夫が女遊びをしていても妻の立場が変わらないならいい。でも相手の女性を好きになるのは絶対許せないから離婚したい。」って。

仁藤:女性を一人の人格ある存在として、関係性を作る相手としてじゃなくて、性欲処理の相手、消費の相手として見ているからということですよね。

角田:そういうことなの。

仁藤:男社会の中での「良い妻」が、女性たち自身にも内面化させられていく。

角田:それが社会の常識だったら、常識を内面化するというのは、それこそ自然な流れだから。。

仁藤:「夫に浮気されるくらいなら風俗に行ってほしい」みたいなのと同じ考え方ですよね。

角田:一時的に他の女を消費するのはいいんだけど、でも私の妻たる立場が安全でなければならない。妻たる立場とは何かというと、夫がちゃんと食わしてくれるってことなの。とても情けない考えだと私は思うんだけど、でもそういうふうに女の人が育てられてきたのも事実なのね。

彼女は自分だけでそんな考えを身につけたわけじゃない。周りがみんなそう言ってるし、そういう風に生きている女がいっぱいいるから、普通の女っていうのはこういうものなんだって思い込んでしまったとも言える。

女性だけをターゲットにする二重処罰

仁藤:私が高校を辞めた16歳の頃、20年ほど前から関わっているJFCネットワークというフィリピンと日本にルーツのある子どもやその母親を支援している団体があるのですが、日本の男性とフィリピンの女性との間に子どもができて、父親が逃げたというパターンがすごく多い。

お母さんたちの多くは貧困状態でエンターテイナーとして日本に出稼ぎに来ていて、来てみるとそれがフィリピンパブやスナックなどの水商売で、地方にでも全国各地に飛ばされる。新潟に飛ばされた私の知っている女性も、客がつかないと雪の中、薄着でドレスのまま店の外に立たされて、凍えるような思いをしていたと。売り上げがないと客と性行為をしなければならなかったという人もいます。そんな時に自分のところに買いに来てくれる男がすごく優しく思えて、その人のことが好きになった。子どもができて出産のためにフィリピンに帰国したけど、実はその男には日本人妻がいた。

そうやって生まれた子どもたちがフィリピンに20万人から30万人、私と同世代の人からもっと下の人までたくさんいます。そういう子どもたちの権利を守り、日本国籍を取れるようにしたり父親探しをしたりしているNGOや現地の団体、当事者の子どもたちや女性たちとColaboはずっと交流があります。子どもたちの権利が守られない状態になっているのも、日本の女性たちが「売る女」と「家庭の中の女」というふうに分けて考えて、「売る女」は性欲処理の相手、消費の相手としてみなす、そういう考えが後押ししているように思います。

角田:そうなのよ。さっき話したように「売ってる女が悪いんだ、売ってる女がうちの父ちゃんをひっかけるから私が困るんだ」というふうに「主婦」が言ってるわけよね。だから売春防止法を作った時にも「買う側を処罰する」という発想は最初からなかった。男が買うのは「当たり前」「甲斐性」でしょって。江戸時代の遊郭がそうだったじゃないかと言うわけね。

もう一つは、お客に米軍兵がかなりいたという話もある。米兵を処罰したくないから、買春を処罰しないことにしたと。じゃあどうするかと言った時に、5条(勧誘等罪で売る側だけが処罰される)が出てくるわけ。売ったことでは処罰しませんよ、買った男も処罰しないんですからって。ここは3条(売買春を違法行為とする)の関係では処罰しないということで平等に扱っている。でも、売ったのは処罰しないけど、誘ったのは処罰するんです。「私と遊んでいきなよ、お兄さん。」って声をかけたらいけないし、その辺をウロウロするのも通行人の迷惑だとかいうことで禁止されている。5条には「女だけ」とは書いてないんだけど、女性をターゲットにしてるんです。

その証拠に、2年前になくなったけれども、婦人補導院という制度があったでしょう。婦人補導院では5条違反で有罪になった20歳以上の女子を、6か月間閉じ込めるわけ。もうなくなったんですけどね、ちょっと前まではネットでカリキュラムが見れたの。

婦人補導院が何をやっているかというと、いわゆる花嫁修業みたいな女の人に必須とされる炊事、洗濯、裁縫みたいな、そういうことを6か月間教え込むの。しかも、刑務所みたいに鍵のかかる個室に入れられて6ヶ月間出られないの。そういうふうにして女性は処罰されていたのね。表面上は男女とも対象なんだけども、法律上明らかに女性に対してだけ重ねての処罰があったわけ。普通は執行猶予になったら法廷からも自由に帰れるのね。ところが女性だけは法廷から婦人補導院に連れて行かれて6ヶ月間閉じ込められる、そういう仕組みだったの。

仁藤:婦人補導院は、2024年に女性支援法ができた時に、それに合わせてなくなりましたが、2017年までは実際に収容されていた人がいました。

角田:つい最近まであったのよ。

仁藤:5条違反で男が捕まったって聞いたことがないですけど……。

角田:聞いたことないね。

仁藤:今の歌舞伎町では男たちが「いくら?」とかそういうのを聞くためにウロウロして治安を悪くしてるし、男たちが通行人の邪魔になってるのに、その男たちには警察は一言も声をかけない。

角田:そうでしょう。5条がそもそも女性をターゲットとして作られてるから。もともと売春防止法って、売春を無くそうとか防止しようとか、女性の人権をどうするかなんて関係ない法律なの。できた年の12月に、日本は晴れて国連へ加盟して国際社会へ復帰するということが決まっていたんですよ。国際社会に復帰するためには、今みたいな買春天国だったらまずいと思ったので、表向きに格好つけただけなの。だからそこで売っている女性の人権なんて視点はゼロだった。そういうふうに成り立ちを考えると納得のいくものなの。

買春者を手厚く守り、被害女性を追い詰める現実

仁藤:今も警察は路上で立っている女性たちに対して、通行人の迷惑になるのでここに立たないでくださいってアナウンスしている。

角田:5条にそう書いてある。とにかく処罰のターゲットは、女。仮に同じ5条で男が捕まったとしても、その男は執行猶予になったらそこでおしまいなの。男子補導院はないわけ。だから、女だけ処罰しますよというのは婦人補導院という制度からも明らかなの。

男は最初から捕まえないし、捕まっても処罰しない。5条っていうのは本来そういうものなんです。その考えを手放さないまま、保護更生とか婦人補導院とかが制度廃止になったから、今すごく変なことになっている。でもそれをどうするかについて、法務省は「俺は知らんよ」と言っているわけ。本当は売春防止法を別の法律に、つまり買春者処罰法に変えるということをしなきゃいけないんだけど、それをやろうと思う人がほとんどいないのが問題なんです。

(※本対談は、買春処罰導入に向けた法務省の検討会がはじまる前に収録。20263月「売買春に係る規制の在り方検討会」がはじまったが、そこでも性売買を女性に対する人権侵害として捉えるのではなく、「景観」や「公然迷惑性」の問題として議論が繰り広げられていること等の問題をColaboは指摘している。

仁藤:買春処罰法はスウェーデン発祥で、そこからフランスや韓国でも導入されてきてますね。買春者と業者を処罰して性売買の中にいる女性が脱性売買できるように支援しようという法律です。日本にもそういう法律を作りたい。女性人権センターがそういう運動の基盤になれたらいいなと思っています。

20257月に、性売買をしていた女性たちが4人、5条違反で捕まったとして顔出し実名報道をされました。女性たちは5条違反でも捕まったんだけど、その後も窃盗でまた捕まっています。買春目的で近づいてきた男の財布からホテルでお金を取ったんですね。それで、男たちは「俺は買春しようとしたら、女に騙されて財布から金を取られた」って警察に駆け込んでいるんですよ。外国人男性は十数人、日本人の男も40人駆け込んでいます。買春は違法行為なのに、罰則がないからです。

実際には、女性が性売買の現場で買春者にお金を盗れる被害もよくあるんです。でも、女性がもし性売買の現場でお金を盗まれたと交番に駆け込んだら、女性自身が捕まる可能があります。だから泣き寝入りするしかないんです。「お前、いつもあそこに立ってるだろ、勧誘しているな」と警察に言われて勧誘罪で処罰されるかもしれない。だから女性たちは性売買の現場でどんな被害にあっても警察に行けないんです。でも、男たちは買春しても自分たちは捕まらないとわかっているから堂々としているんですね。

角田:そう、警察官も買春が禁止されているということをすっかり忘れているか、最初から知らないの。昔、デリバリーで来た女性にお金を盗まれたという事件があって、国選弁護人をしたとき。男が「ことが終わってシャワーを浴びている間に女性がお金を持って逃げてしまった。シャワーをから出てくると女もいないし、金もなかった。」と言うんです。それで、近くの交番にすぐ飛び込んで、警察官に「女を呼んで、こうしたら金を取られた」という話をしたわけ。「女を呼んで買春した」というところを説明しないと話が理解されないわけなんだけど、それが禁止されている行為だという認識は、男の側にも警察官側にもゼロなの。

歌舞伎町でも同じですよ。売買春が禁止行為だってこと、たとえ罰則はなくても禁止行為だということがわかっていれば、そんな堂々と交番に飛び込めないと思うんです。でも飛び込まれた警察官でさえ、禁止になっていることを知らない。そして女だけをとにかく捕まえる。

仁藤:私たちが大久保公園の周辺で客待ちをしている女性たちに声をかける活動をしているとき、後ろから男の怒鳴り声がして「何だろう、また変な人が来たのかな」と思って振り向いたら、警察だったんですよ。彼らは「だめだよ!こんなところにいちゃ!前も言っただろう!自分のことを考えなさい!」って言いながら女性たちを散らしていました。十数人の女性たちが逃げたり隠れたりしていて。その中の7人ぐらいの女性たちを、警察官がずっと追いかけ回していたんです。その様子を買春者たちが腕を組んでニヤニヤした顔で眺めているんですよ。その男たちに対して警察が「お前ら何やってんだ」なんて言っているところは、もちろん見たことありません。

この前、一緒に活動しているメンバーが「初めて警察が男の人に声をかけてるところを見た」と報告してくれました。警察が男に何と言っていたかというと、「この辺危ないですから気をつけてくださいね」です……。「性売買している女に騙されてお金を取られますよ」みたいなことを男たちに言っていて、「あなたは買春しようとしているかもしれないけど、それは違法ですよ」なんていう声かけは一切されていない。そういう現状を変えていきたいです。

角田:売春防止法の3条で売るのも買うのも禁止ってなってるんだから、買う方には罰則つければいいのよ。そして売る方については、スウェーデンみたいに福祉的な支援対象にして処罰対象から外せばいいんです。それは、そんなに難しい話ではないと思うのね。だけど、買春が禁止されているということをほとんど誰も知らないっていう、非常におかしな話になっている。

仁藤:外国人が今いっぱい買春しに来るのも、日本だったら大丈夫というのがSNSで知られているからなんですよ。

角田:だから日本は再び買春天国になってしまった。女が「ここしかない。これしかない。」というところに追い詰められていく社会構造が問題なので、これを変えていかないといけない。女を差別して貧困に追い込む世の中の構造を変えるということが、売春を防止するということだと思う。

「本番以外ならOK」という風営法のまやかし

仁藤:性売買の問題は、売春防止法だけじゃなく、風営法も変えていかないといけないと思っています。日本では売春防止法で本番だけは禁止しながら、風営法で本番以外のあらゆる性交類似行為を認めていて、事実上合法的に性売買ができるような状況にある。私たちは挿入がなければいいということではなく、そもそも売春防止法が挿入だけを禁止しているのがおかしいと考えています。

角田:それはそう。男に禁止する行為をできるだけ少なくするために、対象とする行為の幅を狭くしている。そうすれば、禁止にも当たらないことになるから。

仁藤:「本番」(膣性交)だけを禁止してる国ってないですよね。

角田:ないよ。だからね、「性交類似行為」を指す英語がないの。私はアメリカにいる時に、日本で売春が禁止されているのかどうかをよく聞かれたのね。私は「変な話なんだけど、売春には法律上三つの要件があって、それに当たらないのは別の法律で結果的にOKになっている」と話をしていた。

仁藤:キスしたり、フェラして口でしゃぶったり膣の中に何かを入れたり、あらゆる性行為が実際には風俗店で行われているし、それだけじゃなくて尿を飲んだり、本当に女性が血まみれになるようなあらゆる虐待行為がオプションとして行われています。無料のオプションになっていることさえある。風俗店でそういう女性に対する虐待が、性交類似行為としてあまりにも堂々と行われている。そういうことを多くの買春者、男たちは知ってると思うんですけど、女性たちは全然知らないですよね。

角田:女性も「私には関係ない」なんて呑気に構えていないで、何が行われているのかを知ったうえで、行動すべきだと思う。スウェーデンでは性的サービス購入罪があって、日本で言っている性交類似行為というのは全部対象に入るわけね。

仁藤:日本だと風俗店が当たり前にあるという状況の中で皆さんが育ってきていて、それが問題です。問題は、「膣に挿れたかどうか」ということだけではなくて、性売買や性風俗店がこんなに社会に蔓延している状況自体がおかしいんだという認識を持っていかないと。

角田:だって、挿入したかどうかなんて一体誰が分かるの?そばで見ていないとそんなこと分からないわけですよ。

仁藤:実際には風俗店でも挿入が前提として営業されている店がたくさんある。

角田:体験した人の手記にあったんだけど、「本番やっていることは言うな」って店も言いますからね。あえて「禁止しています」と張り紙をして、ちゃんとしているという体にしている。

仁藤:店が摘発された時に「指導してた」って言って自分たちを守るためですね。

角田:もちろんそう。それをしないと商売にならないんだよ。

仁藤:だから売春防止法を変えるだけじゃなくて、風営法自体を変えないといけない。

角田:お互いに支えあっている法律だから、セットにして買春行為をどうするのかということを考えなきゃいけないね。それから風俗で何が行われているかということについても普通、知るチャンスがない。私もこんな仕事してなければ風俗で何が行われているかなんて知るチャンスがなかったと思う。そういうことも発信していかないとね。

「知は力なり」男社会のど真ん中に女たちの砦を

仁藤:そういう実態を知らせていくためにも、女性人権センターの中に「性搾取ライブラリー」を作りたいと思っています。支援の拠点にもするんだけど、それだけじゃなくて少女たちの証言や性売買の実態がどうなっているかを、みんながそこで知ることができる。
そして、世界の女性運動や法律のあり方が学べるような場所を作りたいなと思っています。

角田:いいですね。

仁藤:角田さんから改めてお話を聞いて、私たちが闘っている相手が何なのかということがよりはっきりしたし、昔からColaboに対する攻撃みたいなことってあったんだとわかりました。声を上げる女たちは、こうやって攻撃され続けてきた。

角田:女の方も力がなかったから、そんなに声を上げられなかったというのもあるね。

仁藤:どうやって力をつけていったらいいんですか?

角田:それは、ひとつは学ぶことだよね。学んでつながっていく経験、交流しあってその中で自分たちの知識も理解も深めていくということ。「知は力なり」って言うけど、それは本当にそうだと思うの。無知だったら人権なんかたやすく奪われるよね。権利について知ることもそうだし、起きていることを正確に見て正しく知ることも大事。

仁藤:そのための女性人権センターにしたいと思います。

角田:女性人権センターについて、私は最初聞いた時びっくりして、そんなことできるのかしらと内心思ったんだけど。

仁藤:なんで今、女性人権センターをやらなきゃいけないと私が思ったかというと、角田さんのように腹の据わった闘いをしてきた先輩たちが、すごく高齢の方が多いからなんです。

角田:だから生きてるうちに早くしなきゃってことね(笑)

仁藤:角田さん今おいくつですか?

角田:83歳になります。あと5年ですよ。

仁藤:いやいや、それは困ります。だって角田さん、「夢乃ちゃんを置いて死ねない」って言ったから。角田さんたちのような長く女性差別の現状を見ながら、セクハラなんて言葉もない時代から闘って、女性の権利を勝ち取ってきた先輩たちがいなくなったら、残された私たちがどうやって闘っていけばいいんだろうと思って。その痛みを分かち合ったり、知恵を寄せ合ったりして一緒に力をつけていく場所を作っていかないと、本当に倒されちゃうと思ったんです。

2022年から妨害を受けてきて、やっぱりそういう闘いをしてきた先輩たちがいるうちに女性人権センターを残したいって思うようになりました。

角田:私も講演に行く時に女性人権センターのことをしゃべるんだけど、そうしたらカンパしたいって人が必ずいるの。いろいろな人の関心を集めているのよ。1,000円でも2,000円でもカンパしたいという人は、私の周りにたくさんいますよ。

仁藤:角田さんは女性人権センターにどんなことを期待して、どんな場所になるといいなと思いますか?

角田:まず自前というのがすごく大事ね。追い立てられないこと。ここだとトラブルがあったときに、貸し主が何か言わないという保証はないわけじゃない。

仁藤:実際、Colaboは妨害のせいで東京都からも場所を追い出されていますから。

角田:だから自前で場所を持って活動するのが本当に大事だなとつくづく思う。場所があるってことはとても大きいことだと思うのね。私、昔、東京の平河町で自分の法律事務所を持っていたんだけど、もちろん借りている場所だったんだけど、17時を過ぎるとそこは法律事務所としては閉めて、他にいろんな女性の運動の拠点に使っていたの。それはすごく便利だったよ。

仁藤:女性人権センターじゃないですか!

角田:ちっちゃいんだけどね。全部で15坪ぐらいなんだけど、一応そこで会議をしたり、事務所にあるコピー機を活用してチラシを作ったりしていたの。自由に使える場所があるってとても大事なのよ。これからColaboが活動を続けていくためにという意味で、もう誰からも追い出されないでやれて、自由に自分たちがそこで管理できるのが大きいと思う。

仁藤:今はますます政治も悪くなっているし。そういう中で逆に公的資金に頼って活動する方が危なかったなって、今すごく思っています。

角田:そうね、政府が変わったらどうなるかわからない。

仁藤:これからの社会の状況は、排外主義や女性差別がもっと酷くなる時代がしばらく続くと思ってます。そういう時代の中で女性の運動を絶やさず、そして性搾取に反対していくと考えた時に男社会から追い出されないような拠点を作りたいなと思っています。

角田:ぜひ、男社会の中にどっしりと。

仁藤:そう!新宿歌舞伎町なんて一番、男社会が権力を見せつけてきた街だと思うので、そこに女たちのビルを建てたいなと。

角田:そうね、でも10億円と聞いてちょっとひるんだけどね。私、死んでも残せない。そんなお金!

仁藤:だから皆さんで作りましょう。そのお金を集めることと同時に、皆さんとそういう思いを共有して、こういう理念、こういう場所が必要だよね、女たちのこういう闘いが必要だよねという思いを世代を超えて繋いでいきたい。

角田:それはいろいろな人が関心を持つテーマではあるわね。

仁藤:ぜひ一緒に形にしていきたいと思います。

角田:じゃあもう少し長生きして進行を待ちましょう。

仁藤:お願いします。角田さんのご経験から、私たちもまだまだ長い闘いをこれからもやっていこうと改めて覚悟が決まりました。

角田・仁藤:頑張ってやっていきましょう!!


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